2024年になり、バージョンアップしたNISA(ニーサ)がスタートしました。
これは日本人の個人資産の形成を支援してくれる強力な制度です。
マスコミやウェブなどで話題になっていて、「NISAで買うならコレ一択!」「NISAでやってはいけないこと3選」という類の刺激的な記事が目に付きますね。
とはいえ、NISAがそもそも何なのか、分かっているようで分かっていない方は少なくないと思います。
そこで今回は、NISAを活かすために基本的な知識を身につけられるよう簡単に解説していきます。
NISAとは?
NISAは2014年にスタートした「少額投資非課税制度」です。
NISAというのは「Nippon Individual Savings Account」の略で、日本語訳すると「日本版個人貯蓄口座」になります。
イギリスの非課税口座制度であるISA(Individual Savings Account)に倣って、こういう名称になりました。
ものすごく簡単に言えば「個人の資産形成を促すために、投資に関する所得税を非課税にする」制度です。
以前の記事(グラフを再掲)で見て頂いたように、預金以外の金融商品へ投資して資産を形成することは、残念ながら日本ではまだ普及していません。
一方、欧米では投資による資産形成は当たり前になっています。
そして悲しいことに、21世紀に入ってからの日本と欧米との金融資産の格差は広がる一方です。
近い将来の日本は、高齢化が進むことによってリタイアメント後の期間が長くなることに加え、少子化で現役世代による稼ぎ(年金原資)が減少する、というダブルパンチを喰らう公算が高いです。
すると日本人はこの先、公的年金からの収入だけで暮らしていくのは厳しくなる、という見通しが現実味を帯びてきます。
こういった事情を踏まえて、自身の老後の生活が厳しくならないよう現役の内から資産形成して、自ら備えてもらおうというのが、NISAの背景にあります。
つまり、NISAを活用した資産運用を日本政府が促す意図は、我々が自主的に老後資金を確保できるようにする、ということに他なりません。
新しいNISAは何が変わったのか?
まず2023年までのNISAを旧NISAとすると、2024年からの(新しい)NISAは「旧NISAを改善した制度」と言えます。
旧NISAについての詳細は割愛しますが、そこからの主な改善点は6つあります。
これはそのままNISAの特徴と言えるものなので、一つずつ見ていきましょう。
①制度の恒久化
【ずっと口座を持っていられる】
NISA口座はいつでも開設でき、開設後は生涯ずっとNISA口座を持ち続けられます。
旧NISAは口座開設期間が定められていた期限付き制度でした。
その期限が無くなったというのは「死ぬまで非課税で資産運用できる」ということです。
つまり、長期投資で資産を増やせる可能性が高まりました。
②非課税保有期間の無期限化
【ずっと非課税にしてもらえる】
NISA口座で保有している限り、投資した金融商品は生涯ずっと非課税で運用できます(旧NISAは期限付き)。
長期投資を前提として保有している限り、①+②で運用すれば資産を増やせる可能性は飛躍的に高まります。
③つみたて投資枠と成長投資枠を併用可能
【一つの口座の中に枠が2つある】
NISA口座は一人に一つだけですが、その中で積立投資とスポット投資を同時にできます。
旧NISAは「つみたてNISA(積立投資用)」「一般NISA(スポット投資用)」という具合に口座自体が別に設定されていて、1年間はどちらか一つの口座への投資しかできず不便だったため、NISA活用の幅が格段に広がりました。
④非課税保有限度額は1,800万円
【簿価1,800万円まで保有できる】
NISA口座では、簿価総額1,800万円まで金融商品を保有できます。
簿価とは購入時の投資額(購入額)です。
NISA口座で保有している間、その金融商品は時価(その時点における市場での取引額)で評価されます。
そして、その金融商品を売却する際は、売却時の時価で購入したものとみなして簿価は無視されます。
そのため、「資産額は購入してから変化していない」=「利益も損失もない」ので課税対象は存在しない(非課税)というわけです。
なお、成長投資枠は1,200万円が上限で、これは総額1,800万円の内数になります。
ちょっと分かりづらいと思いますので、以下の例でイメージを掴んでくださいね。
例1:成長投資枠を利用しない
➡つみたて投資枠は1,800万円まで使える
例2:成長投資枠を上限(1,200万円)まで利用する
➡つみたて投資枠は600万円まで使える
例3:成長投資枠を450万円まで利用する
➡つみたて投資枠は1,350万円まで使える
⑤年間投資枠は360万円
【1年間で簿価360万円まで購入できる】
これは④1,800万円の内、1年間で購入できるのは簿価合計360万円が上限ということです。
360万円の内訳は、つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円です。
⑥非課税枠の再利用が可能
【売却して空いた枠は再び使える】
保有していた金融商品を売却した場合、その簿価分の枠が空くことになり、翌年以降に再び使えます。
ただし、⑤との関係においては、⑤が優先されます。
今年の内に簿価100万円分を売却するとその分の枠は空くものの、来年になって投資できる上限額は簿価360万円から変わりなく、それ以上は増えないということです。
いつでも1年間の上限は360万円で、460万円(360万円+100万円)にはなりません。
なお、⑥は使い勝手を良くするための措置ですが、長期投資という観点ではあまり重要ではないです。
というわけで、NISAの特徴を一枚の表にまとめると、以下になります。
ここで気を付けたいのは、投資できる金融商品には制限があるということです。
それぞれの枠に対して、金融庁によって基準・要件が示されており、それを満たすものに限りNISA口座で保有できるわけです。
ちなみに、制限があっても対象商品の数はすごく多いです。
詳細は以下リンクで確認できますが、私はあまり参照していません…(証券会社のウェブサイトで検索する方が簡単なので)。
つみたて投資枠の対象商品(金融庁)
成長投資枠の対象商品(投資信託協会)
今回のお話は、ここまでです。
次回は、NISAが注目を集めている理由を考えたうえで、利用した場合としない場合を比べてみます。
そこから、資産形成におけるNISAの有用性を検討していきます。