長田FPオフィス

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“iDeCo”の壁は高くない

今までにiDeCo(イデコ)という単語を見聞きしたことはありますか?
「そう言えば何となく…」という方はいても、「まったく初耳だ」という方はいないでしょう。
むしろ、すでに制度を利用している方も多いと思います。

iDeCoは、ざっくり言えば「自分の老後に、自分で備える」ために国が用意した制度です。
なので、似たような制度であるNISAとは、常に比較されます。
それぞれ有用な制度であることは間違いないのですが、なぜかNISAよりiDeCoの方が取っ付きにくい印象があります。

そんなiDeCoですが、良く分からないままに「私には関係ないや」となるのは、もったいないです。
それでは後になって「制度を理解していれば上手く活用できたのに」と悔やむかも知れません。

将来の自分が後悔しないように、iDeCoが取っ付きにくい理由を探り、活用するためのハードルを下げていきたいと思います。

残念な事実

iDeCoについては様々な情報が提供されていますが、なかでも制度の実施機関である国民年金基金連合会による公式サイトは、キレイで見やすいです。
それでも実際に始めるまでのハードルは高いようで、以下の通り旧NISA口座と比べてもiDeCo加入の数は少ないです。

【NISA口座開設数】旧一般・つみたて
 約2035万口座(2023年9月末時点)
金融庁HP, 2023年12月22日公表

【iDeCo加入者数】
 約303万人(2023年7月末時点)
厚生労働省HP,2023年9月1日公表

NISAとiDeCoでは利用できる人の条件が異なるので、この数字だけで制度の優劣を判断するのはナンセンスですが、取っ付きやすさを比べるくらいなら、ちょうど良い目安になりますね。

このデータのNISAの数字は、バージョンアップ前の旧制度のものです。
現在のNISAの方が旧制度より人気があるので、今後この差はさらに広がると推測できます。

こうした状況から、過去も未来もiDeCoの方が取っ付きにくいのは事実、と言っていいでしょう。

なぜ”iDeCo”って言うの?

そもそも、なぜこの名前になったかを説明します。
というのも、大抵の場合は「名は体を表す」にもかかわらず、iDeCoは名前自体が難しいため、何を表しているのか理解しづらくなっているからです。

iDeCo は「individual-type Defined Contribution pension plan」の略で、日本語訳すると「個人型確定拠出年金」となります。
この確定拠出年金という単語が難しいですね。

でもご安心を。
簡単に言い換えると、こうなります。
老後に年金を受給するには、その原資を作る必要があります。
そのためには金融商品へ投資して資産運用するのですが、金融商品の購入に拠出する金額を確定します、という方法が「確定拠出年金」です。

一般的には、拠出金額を決めて定期的に購入する積立投資になります。
そして個人型というのは、政府や自治体、会社など他者がやってくれるのではなく、自分のために個人で積立投資することを指します。

要するに、「自らの年金資産を積立投資で形成しよう」というシンプルなことを一言で表現したら、なんだか分かりづらい名前になってしまったわけです。

この制度の詳細は別の機会に紹介しようと思うので、ここでは「さほど難しくない」ということだけ認識して頂ければ十分です。
難しい名前のせいで入口のところに高い壁が見えていたけれど、本当はそんなに高い壁はなかった、というわけです。

NISAとの比較(簡易版)

iDeCoの制度を正しく説明しようとすると長くなります。
さらにNISAと比べようとすれば余計長々と続けることになり、説明をする側も受ける側も、結論に行き着く前に嫌になって途中で諦めてしまうことに…

そういう事態を想定したのか分かりませんが、厚生労働省のウェブサイトにiDeCoとNISAの比較をまとめた表があります。
こちらにも掲載しておきますので、ご覧ください。

両制度のポイントを極限まで絞り込んで簡単に書いたものなので、制度を分かっている人にとっては良く整理された表ですが、そうでない人にとっては逆に分かりづらさを助長してしまいます。

加えてこの表では、iDeCoの説明に曖昧な表現が多用されています(スペースの都合で仕方ないのですが…)。
それらを挙げると、以下のような疑問が生じてしまいます。

 曖昧な表現   ➡生まれる疑問

年齢に係る「原則」 ➡例外がある?
金額に係る「~」  ➡なぜ幅がある?
税金が「少なくなる」 ➡どれくらい?

つまり、いろいろ条件が多そうだ、ということが想像できます。
どんなものでも前提や制限が多くなれば、それを理解するのは難しくなってしまいますよね。

取っ付きにくさの原因

結局のところ、iDeCoという名前の難しさ、制度の各段階(加入・運用・受給)における「簡単にまとめられない」条件と手続きの複雑さ、これらが絡み合ってiDeCoを取っ付きにくくしているようです。

名前については、先ほどの説明をご理解頂くことで、少しハードルが下がったと思います。
さらにiDeCoを親しみやすいものにするために、次回から、各段階における複雑さを一つずつ解きほぐしていきます。