ファイナンシャルプランナー(FP)は、お金に関する豊富な知識を有しています。
その知識を活かしたコンサルティングによって、FPは相談者のお金の不安や悩みを解決することが可能になります。
今回はFPのコンサルティングとはどんなものか知って頂くために、その一部をご紹介します。
はじめにFPが得意とする専門分野をお伝えしてから、コンサルティングの肝であるライフプランニングと、それを基にしたキャッシュフロー表(CF表)の概要を説明していきます。
FPの専門分野
一般的にFPは「お金のプロ」と呼ばれています。
現代のアメリカでは、医者や弁護士と並んで、重要なことを相談できるコンサルタントとして認識されています。
ただ、お金に関係する職業を挙げれば、FP以外にも会計士や銀行員、保険外交員、証券アナリストなど、様々な人がそれぞれの専門分野で活躍しています。
FP以外の仕事は、職業名から専門分野が何なのか連想しやすいです。
一方、「FPの専門分野は何なのか?」具体的にイメージできる人は少ないと思います。
FPの専門分野を一言で表せば「個人のお金」、つまり「家計」です。
食費に家賃、電気代、水道代、保険料、交際費、交通費、携帯料金、税金など、日々の生活に直結する短期のお金に加え、教育費や住宅ローン、不動産や株式、相続財産や老後資金など、数年~数十年単位の長期のお金も対象としています。
このように活動領域が広過ぎて一つに特定できないことが、何をやっているのかイメージしづらい原因と言えるでしょう。
FPは、お金のプロとして取り扱うものが多岐に渡るため、ある時点の出来事だけに注力するのではなく、人生のあらゆる場面のイベントを繋ぎ合わせていきます。
そうやってお金の動きを時系列に沿って数値化します。
さらにその数値を俯瞰的に見るために、表やグラフを用いて分かりやすく可視化します。
FPのコンサルティングを通じて「いま現在」と「これから」のお金の状態を客観的に把握することで、不必要な出費を抑えたり将来の資産を増やしたりというコントロールが可能になり、目に見えて生活の質を改善することができます。
FPが医者や弁護士と並び称される理由は、ここにあるわけです。
まずはFPの専門分野「個人のお金(家計)」と役割について、大まかなイメージを掴んで頂けたでしょうか?
ライフプランニングの大切さ
多くの人が「理想の人生」を送りたいと願っているはずです。
にも関わらず、「私にとって理想の人生とはどんなものか?」、それを明確に描けている人は多くないと思います。
というわけで、お金の相談に際してFPが最初に取り組むのは、お金の話ではありません。
まずは相談者の「理想の人生」を明確にする「ライフプランニング」から始めます。
理由は至ってシンプルです。
相談者としては、「お金は理想の人生を送るために必要」だけど「お金のために生きているのではない」からです。
生きていくうえでお金はとても大切ですが、それより大切なものがありますよね。
心身の健康、家族や恋人や友人、生きがいの追求、その他いろいろと。
つまり、お金より大切なものを手に入れたり守ったりするために、お金が必要になっているだけです。
そういうわけで、FPはお金の話をする前に、相談者がどういう人生を送りたいかヒアリングしながら、一緒になってライフプランを作成します。
例えば、25歳で結婚・住宅を購入した男性が、現時点で考える将来の家族の主なイベントを書き出してみましょう。
この表のように、簡単なものでOKです。
これがベースとなるライフイベント表です。
さらに、住宅はいつ買おう?マイカーは必要かな?家電の買い替えはどうしよう?家族旅行は毎年行きたいな、という詳細を加えることにより、リアルな未来を描くことができます。
こうして、様々な希望を具体的に書き出して表を補完していくことで、ライフプランを明確にしていきます。
キャッシュフロー表を作る
ライフプランが明確になれば、そこにお金の動きを添えることで、キャッシュフロー表(CF表)を作成できます。
現在の収入や支出、これからの物価上昇率や昇給率、定期的に発生する車の買い替えや住宅修繕など、それぞれの収支を時系列に沿って計算してライフプランと合体させれば、CF表が完成します。
このCF表をグラフ化すると、将来のお金の状態が顕わになります。
例えば、前述の25歳男性の人生を現状のままグラフにしてみると、以下のようになります。
このグラフから、50代前半までの長きに渡り、金融資産残高がマイナスに沈んでいる状況が見て取れます。
これが意味しているのは、ずばり「借金しないと生きていけない」という状況です。
仮に自分ひとりだったら切り詰めた生活を送れるかもしれませんが、彼は結婚と同時に住宅ローンを組んでおり、さらに将来2人の子宝に恵まれる人生を想定しています。
家族に借金生活をさせたくないので、何とかしなければなりません。
このようにCF表からグラフを作って、何とかしないとマズいことが分かっただけでも、大きな収穫だと言えます。
なぜなら、今ならまだ手遅れにならず、改善できる可能性があるからです。
その可能性を引き出して未来の状況を改善できる専門家がFPです。
FPとともにライフプランを見直せば、これから起こるお金に関するイベントに、優先順位をつけることができます。
優先順位を考慮した対策を改善案に織り込んでCF表に反映させると、先ほどのグラフは以下のように変化します。
ここで講じた対策は次回お話ししますが、いずれにしても無理ない範囲で工夫すれば、収入と支出のバランスを取りつつ資産残高プラスを維持できるようになり、借金しなくてもやっていけそうなことが分かります。
ここまでくれば、あとは行動するだけです。
理想の人生を送るために、改善案を実行に移します。
年齢別ライフプランのシミュレーション
次回からは、リアリティあるライフプラン設定を基にした事例を通じて、コンサルティングによる改善対策を見ていきます。
そこでお見せするのは、基本条件が同じになるように揃えた、結婚年齢の異なる3つの人生のシミュレーションです。
具体的には、ある人の結婚年齢を25歳、35歳、45歳と変化させて、それぞれ現状のCF表と対策後のCF表を分析していきます。
細かい設定を知らなくても分析の流れが分かるように説明するつもりですが、もうちょっとリアルにFPのコンサルティングを体感してみたい場合は、以下の「共通する基本条件」を開いて頂くことをおススメします。
情報量は多めですが、これを頭に入れておけば、きっと現実味がわいてシミュレーションが面白くなるはずです。
職業:会社員(就職23歳、退職65歳)
※役職定年無し、転職無し
現役時昇給率(年率):2.5%
現役時年収:500万円(25歳)を基準
※35歳で640万円、45歳で820万円
退職金:2,000万円(65歳一括受け取り)
年金受給開始:65歳(年金変動率は考慮)
家族:配偶者あり、子供2人(予定)
配偶者の年齢:世帯主マイナス3歳
配偶者の職業:結婚前は会社員、第2子保育園の入園まで専業主婦、入園後はパート
第1子:女、結婚1年後生(本人28歳結婚)
第1子の学歴:公立小・中➡私立高➡私立大文系(学生時代は両親と同居)
第2子:男、結婚5年後生(本人30歳結婚)
第2子の学歴:公立小・中・高➡国立大理系(学生時代は両親と同居)
子供への資金援助:結婚90万円、住宅無し
住宅:結婚年に購入(諸経費込4,500万円)
※25歳のみ親からの補助1,000万円
※団体信用生命保険加入(世帯主)
※住宅ローン控除対象の認定住宅
住宅ローン:フラット20-35を事例毎に選択
住宅ローン金利:元利均等2%固定
固定資産税(年額):20万円
生活費:家計調査(総務省統計局)
※二人以上の勤労世帯2022年
※子供独立後は一人当たり70%
生活費変動率(年率):2.0%
※いわゆる「インフレ率」のこと
生命保険料(年額):18万円(夫婦合計)
※世帯主保障は1,500万円終身
※配偶者保障は500万円60歳定期
損害保険料(年額):5万円(地震保険)
車ローン(年額):27万円(25-55歳)
車維持費(年額):20万円
家具家電買い替え:20万円(5年毎)
車買い替え:300万円(55歳から15年毎)
住宅修繕費:100万円(取得20年後から10年毎)
家族旅行(年額):10万円