前回の記事では、私的年金の制度は色々あるということが分かりましたね。
そうやって見ていくと、公的年金の不足分を補うために私たち自身で将来に備えることは、そんなにハードルの高いものではないように思えます。
特に、iDeCoに代表される確定拠出型(DC)の年金制度は、加入者自身による運用が可能であるため、資産運用において重要な役割を担うことが期待できます。
そこで今回は、DCにフォーカスして、さらに深掘りしていこうと思います。
確定拠出年金のおさらい
確定拠出年金(DC)は、加入者自らが拠出金を運用して、その損益を合わせた「運用資産」が給付原資になります。
そのため、自分年金としての自由度が高い制度である、と言えます。
DCには「企業型」と「個人型(iDeCo)」の2種類があり、これらの違いは「誰が掛金を拠出するか?」という点になります。
一般的にDCは、企業・個人ともにメリットを享受できる制度であるため、資産運用に対する認識の浸透にともない、その利用は年々拡大しているのが実情です。
企業型DC
というわけで、まずは企業型DCについて、ちょっとだけ説明したいと思います。
企業型では、企業(事業主)が掛金を拠出して、従業員が加入対象となります。
現行(2024年10月19日時点)では、毎月の拠出限度額は、企業が確定給付型年金(DB)を実施していない場合は5.5万円、実施している場合は2.75万円です。
また、企業の拠出とともに加入者個人も拠出可能なマッチング拠出という別枠もあります。
マッチング拠出における毎月の拠出限度額は、事業主掛金額と合計で5.5万円まで、です。
ただし、事業主掛金額を超えてはならない、というルールになっています。
後述するiDeCoと同様、2024年12月1日の拠出分(2025年1月引落)から限度額が変更となりますが、複雑なのでここでは割愛します。
詳しくは、厚労省から制度改定の説明をご参照ください。
個人型DC(iDeCo)
それでは本題の個人型DC、iDeCoについて説明しますね。
…とはいえ、iDeCoに関する基本情報は、以前の記事で紹介しているので、基礎的な内容はそちらをご参照ください。
ここでは、2024年12月に拠出額が改定されるという点に的を絞って、その変更内容について説明していきます。
iDeCo公式サイトのお知らせでは、2024年12月1日の拠出分(2025年1月引落)から限度額が変更になる、ということが案内されています(該当ページ後半の「今後の改正」参照)。
細かい変更を無視して最も重要なポイントを要約すると、「これまで限度額が月額1.2万円だったサラリーマン・公務員は、これからは月額2万円まで拠出できる」、ということです。
毎月の拠出限度額について現行(2024年11月30日まで)と改定後(2024年12月1日から)、それぞれを表にまとめたものが、以下になります。
これらの表のうち、左側と右側は無視して、真ん中2つの赤枠箇所に注目してください。
「iDeCo 月額1.2万円」が「iDeCo 月額2.0万円」に変更されています。
「②企業型DCと、DB等の他制度に加入」と「②DB等の他制度のみに加入(公務員を含む)」を対象としているんですけど、ちょっと分かりづらいですよね。
なので、もっと噛み砕いて要約すると、今回の改定における対象者は、先ほどお伝えした「これまで限度額が月額1.2万円だったサラリーマン・公務員」になるわけです。
これらの人は、これまでは年間で14.4万円が拠出上限でしたが、これからは24万円までiDeCoを活用できるようになります。
この効果を確認するため、以前の記事で使ったSBI証券のiDeCoサイトを利用して簡単に試算してみました。
条件は、こんな感じです。
開始年齢:40歳
終了年齢:65歳(25年間)
運用利回り:5%(年率平均)
積立額:拠出上限額を毎月積み立てる
配偶者:あり(扶養)
子ども:10歳(扶養)
すると、今回の改定の違いは、以下のようになりました。
①これまで
毎月の拠出1.2万円(年14.4万円):投資総額360万円
最終価額:約703万円
毎年の税優遇2.91万円:総額72.75万円(所得控除による)
②これから
毎月の拠出2.0万円(年24.0万円):投資総額600万円
最終価額:約1,171万円
毎年の税優遇4.85万円:総額121.25万円(所得控除による)
つまり、これまで毎月1.2万円の拠出でiDeCoを利用していた人が、毎月8千円を追加すれば、25年で約470万円の運用益を資産額に上乗せできる、という結果になるんです。
これって、すごいインパクトだと思いませんか?
今回の改定は、多くの人にとって無視できないメリットがある、と言って良いでしょう。
こうなると、「拠出額を上限まで使いたい!」、と希望する人もいらっしゃると思います。
最速で12月1日の拠出分から拠出額を引き上げるためには、現在加入している運用管理機関で変更手続きをする必要があります。
手続きの事前受付は、2024 年 9 月 2 日(月)~10 月 31 日(木)(各運営管理機関必着)、まさに今が期間中なんです。
詳細はiDeCo公式サイトの案内をご確認頂きたいのですが、現在、iDeCoを利用しているのであれば、拠出額を変更する・しないに関わらず、なるべく早めに調べてみることをおススメしたいです。
もっと知りたい人は…
確定拠出年金の話は、(制度自体が複雑なことも相まって)地味であまり面白みの無いものになりがちなため、ここでは改定ポイントに注目し、ギュッと凝縮してお伝えしてきました。
とはいえ、実際には、細かな制限やルールが多々あるので、できれば(退屈で難しくても)もう少し知っておいた方が良いでしょう。
DCの制度概要については、厚労省ウェブサイトで詳細を確認できます。
また、iDeCo拠出額の2024年12月1日からの改定の全容は、厚労省による詳細な説明がありますので、ご興味ある人はぜひ覗いてみてくださいね。