長田FPオフィス

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統計を知ろう⑤生活統計

家計という言葉には、きらびやかな派手さは全くありません。
そんな「字面が地味な」家計ですが、生きていくうえで絶対に無視できないほど、私たちの生活にとっては重みのあるものです。

というわけで今回は、私たちの生活と家計に関する統計を取り上げたいと思います。

自分自身の家計事情はもとより、お隣さんの「食卓に並ぶおかず」や「芝生が青く見える」という具合に、他人様の懐具合なんかも気になることってありますよね。
そんなときは公的統計を見ることで、「いったい世間はどうなっているんだ?」という疑問を解消できるかもしれません。

ちょっと脱線しましたが、これから興味深い統計をいくつかご紹介していきます。

平均世帯のお金の事情:家計統計

まずは、家計統計です。
毎月実施される家計統計調査により作成される、基幹統計の一つです。

この調査では、全国の世帯における消費支出や収支バランスが明らかになります。
調査対象は全国168市町村の世帯(二人以上8,076世帯、単身673世帯)ですが、学生単身や外国人、世帯主が長期不在などの世帯は、正確性の観点から除外されます。

基本的には家計簿に日々の収支を記録してもらい、それを1年に渡り継続して集計するため、季節要因も踏まえた変動を掴むことができます。
また、貯蓄や負債なども調査項目に含まれます。

家計統計では、各世帯条件における平均的な収支を知ることができますが、この統計を一躍有名にしたのは、何と言っても「老後2000万円問題」です。
この2000万円という金額を試算する際に参照した資料が、家計統計だったからです。

「老後2000万円問題」については、こちらの記事で分かりやすく解説しているので、ご興味あればぜひご参照ください。

ちなみに、この問題の試算に用いられた「夫婦高齢者無職世帯」の家計収支は、家計統計の最新の年間結果(2023年)では以下のようになっています。

これに基づいて試算し直すと、「平均的な夫婦2人世帯では、老後30年間で1365万円の生活資金が不足する」という結果になります(内訳:不足分37,916円/月 x 12カ月 x 30年)。

正直、2000万円問題だろうが1365万円問題だろうが、これらは平均値を使った試算なので、私たち一人ひとりにとってみれば、現実的な数字ではありません。
数字自体は、「へー、そうなんだ」くらいに捉えておけば十分です。

そんな数字より自分に適した備えをすることの方が大切なので、まずキャッシュフロー表を作成することで自らの状態を把握し、気になる点や不安なことがあるならば、将来に向けて今から行動を開始しましょう。
その場合、FPに相談することはとても効果的だと言えるので、積極的に活用しましょう。

なお、家計統計については、いつも通り政府統計の総合窓口e-Statで詳細検索できますが、結果だけ知りたいなら総務省統計局ウェブサイトが便利です。

全国家計構造統計

次にご紹介するのは、全国家計構造統計です。
全国の家計の構造を知るため、消費、所得、資産、負債の状態を総合的に明らかにしようというものです。
こちらも基幹統計の一つで、5年ごとに実施される調査によって作成されます。

調査対象は全国9万世帯(家計統計調査と同様に除外世帯あり)で、都道府県などの地域別に収支や資産の構造を把握できるだけでなく、世帯の構成員についても個別に調査されます。
いわゆる「家計統計の完全版」というイメージです。

ここでは詳しい説明は割愛しますので、興味のある人は総務省統計局ウェブサイトを覗いてみてください。
なお、次回の調査は、2024年10月と11月に実施される予定です。

所得と健康の関係:国民生活基礎統計

続いては、国民生活基礎統計です。
これは所得と健康と介護について包括的に知ることができる、厚生労働省による基幹統計の一つです。

基本的に3年ごとに実施されますが(大規模調査と呼ばれ次回は2025年予定)、その間の年は簡易調査が行われ、調査結果は人口推計(統計を知ろう③人口統計)などに基づいた比推計値として公表されます。

調査対象は、大規模調査は約30万世帯、簡易調査は約5.5万世帯です。

調査項目は、健康面での自覚症状、通院状況、健康意識、不安やストレスの状況、健康診断受診状況など、心と身体の健康状態に関するものから、介護に関する詳細(要介護の状況)、世帯構造(世帯人員、分類)、所得や貯蓄、生活意識ということまで、網羅的なヒアリングが行われます。

例えば、前回の大規模調査(2022年実施)の結果では、男女別の通院状況について、以下のグラフのような傷病が上位となっています。

ここでは、該当傷病での通院者率が、人口1千人あたりの人数で表されています。

このグラフによると、男性は糖尿病、女性は腰痛症が、それぞれ特徴的な傷病のようです。
民間の医療保険に加入されている人は、特徴的な傷病とともに男女共通の傷病に対しても、保障でカバーされているかを確認したいところですね(もしカバーされていないようなら、何のために保険料を払っているのか、冷静に考えてみて欲しいです)。

また、最新の簡易調査(2023年)では、生活意識がどう変化しているか、調査年ごとの結果を見ることができます。

ご自身の実感とみんなの意識を比較してみて、どうだったでしょうか?
こんなふうに見ていくと、なかなか面白いですよね。

いつも何しているの?:社会生活基本統計

最後は、社会生活基本統計です。
私たちが日常の生活時間や余暇の間をどのように過ごしているのかを明らかにするという、とてもユニークな統計で、5年ごとに実施される調査を基に作成される基幹統計の一つです。

調査対象は全国約9.1万世帯のうち10歳以上の約19万人です(除外者あり)。

調査項目は、1日の生活時間と1年間の自由時間に分かれており、それぞれ何をしていたか・誰と過ごしていたか・項目別の詳細、ということが年齢・性別・地域ごとに集計されます。

これは「政策に活かす」「ビジネスチャンスを探る」などという積極的な目的を持たない私のような人にとってみれば、「普段みんな何しているのかな?」という、ちょっとした好奇心を満たしてくれるものと言えるので、この統計には、なんだか親しみを感じてしまいます。

試しに、具体的な調査結果を見てみましょう。
まずは、スマートフォンとパソコン(以下、スマホ等)の使用に関するデータです。

これは、1日のうち行動種類別に、スマホ等の使用時間を集計したもので、縦軸が表題行動に充てた時間、横軸がスマホ等の使用時間になります。

通勤・通学の手持無沙汰な時間が多い行動ではスマホ等の使用時間も長くなり、対照的に、ながら行動が困難なものはスマホ等の使用時間が短くなる傾向にあります。

ただし女性に限定してみると、家事関連の時間はスマホ等を「使用しなかった」人の方が、スマホ等の使用が「3時間未満」だった人よりも短くなっています。
もしかすると、「使用しなかった」人には高齢者が多く、その豊富な経験から家事を効率良く済ませる時短熟練者の割合が多いのかもしれませんし、もっと単純に、スマホ等をいじらなければ誰でも家事に集中できるでしょうから、それで効率的になったのかもしれません。

とはいえ、このデータからは何も断定できないので、あくまで単なる仮説にすぎませんが、こうして想像を膨らませてみるのも面白いですよね。

次に、6歳未満の子供を持つ夫と妻が、家事・育児にかけている時間の推移です。

このグラフは、2001~2021年まで5年ごとの推移を表しています。

夫の方は緩やかですが、家事・育児に参加する時間が増えています。
妻に比べると十分とは言えないものの、良い傾向ではないでしょうか。

一方、妻の方はトータル時間はさほど変化しませんが、家事時間が減って育児時間が増える傾向が顕著に見られ、2016年には逆転しています。
夫のデータから察するに、これは夫の協力というよりも、他に要因がありそうです。
もしかすると時短家電の普及により家事の効率化が進んだのか、あるいは家事代行サービスの利用が一般的になったからかもしれません。
いずれにしても、先ほどのスマホ等と同じく、色々な仮説を想像することができそうですね(原因は断定できませんが)。

まとめ

今回は、生活や家計に関する統計をご紹介しました。
私たちのお金の話だけでなく、時間の使い方についても調査・公表される、そんな公的統計の幅広さを知って頂けたと思います。

より良く生きるために統計を学ぼう!…なんて堅苦しくならず、ちょっとした好奇心に任せデータを眺めるだけでも、何か新しい発見があるかもしれませんね。
たまにはそんな「知的なワクワク」を楽しんでみるのも良いでしょう。