よほどの資産家でない限り、私たちは一所懸命に働いて収入を得ることで、生活を営むことができます。
労働収入があることは、「生計を立てられる」という当面の目安を生むため、日々の暮らしにおける安心感へ繋がります。
そこで今回は、私たちが生活するために欠かせない労働について、様々な統計を説明したいと思います。
プライベートの時間に労働の話なんて…と思われるかもしれませんが、ご安心ください。
普段の仕事を思い出させるような話ではなく、むしろ「プライベートで使える」そんな内容になっています。
というわけで、ここから労働統計について見ていきましょう。
失業率は?:労働力統計
一つ目の統計は、分かりやすい名前の労働力統計です。
労働力調査を基にして毎月公表される基幹統計の一つで、毎月の就業・不就業の状態などを知ることができる統計です。
基本的には全国約4万世帯、うち就業状態については15歳以上(約10万人)を調査対象としており、調査結果は月別の人口推計に基づいた比推計値として公表されます。
調査項目は配偶の関係や就業有無からはじまり、勤め人か自営か、事業所名、事業の種類、役職名、仕事の内容、就業時間、さらに不就業の場合は求職活動の状況や時期、探している仕事の位置付けなど、労働に関することが満載です。
なかでも景気動向を探るうえで重要な完全失業率は、この統計により毎月報告されるので、私たちにとって身近な統計と言えるでしょう。
労働力統計は、政府統計の総合窓口e-Statで詳細を検索できますが、結果だけまとめて閲覧したい場合は、統計局ウェブサイトが便利です。
数あるデータのうち、参考資料として調査結果の最近の動向等のグラフをご紹介します。
完全失業率(季節調整値)と就業者数(対前年同月増減)の推移です。
最新(2024年6月分)の統計結果では、就業者数は6,822万人で、比較が可能な1953年以降で過去最多となっており、完全失業率(季節調整値)は2.5%でした。
これらの数字をグラフと照らし合わせてみると、失業率はリーマンショック時の2009年7月に過去最高の5.5%となりましたが、その後は(コロナ禍で一時的に上昇したものの)、基調としては減少トレンドで低位安定していることが分かります。
つまり、数字のうえでは、雇用は良い状態にあると言えます。
家計に余裕はある?:毎月勤労統計
二つ目は、厚労省より公表される毎月勤労統計です。
毎月の賃金や労働時間、雇用の変動を明らかにするため、毎月勤労統計調査に基づいて作成される基幹統計の一つです。
調査対象は、基本は常用労働者5人以上の事業所で、雇用保険や労災保険を改定する際の参考資料などとして使用されます。
調査項目は常用とパートタイム労働者に分けて、異動状況、勤務日数・時間(所定労働時間と残業など)、給与(基本給と残業手当など)があります。
この結果のうち、特に世の中の景気を良く反映しているのが実質賃金です。
実質賃金は、現金給与総額指数から消費者物価指数を引いた実質賃金指数で表されますが、要は収入(名目賃金)と支出(消費者物価指数)のどちらが多いかという、家計の収支バランスを知るためのものです。
プラスなら家計に余裕があるということなので、その分のお金を貯蓄やさらなる消費に回せますが(好況)、マイナスなら赤字で余裕なく家計が苦しい(不況)、ということですね。
それでは、実質賃金の推移をグラフで確認してみましょう。
実質賃金指数の最新(2024年6月分)結果は1.1(常勤30人以上は0.9)で、実に27ヶ月ぶりのプラス転換となりました。
この結果は、物価の上昇に対して賃金の上昇がようやく追いついた、という喜ばしい状況を意味しています。
これが賞与効果による一時的なものに終わらずに、引き続きプラスが維持される(基本給が上昇する)ことを期待しています。
このように家計にとって良い循環が生まれそうな状況下では、政府や日銀には経済を腰折れさせることのないよう、実直に金融政策を進めていって欲しいと思います。
なお、毎月勤労統計も、e-Statより厚生労働省ウェブサイトの方がおススメです。
就業構造基本統計と賃金構造基本統計
これまでの二つの統計は、毎月の動向を知ることが出来るタイムリーなものでした。
最後にご紹介するのは、労働に関する構造を知るための基幹統計になります。
それは、就業構造基本統計と賃金構造基本統計の二つです。
まず就業構造基本統計ですが、誤解を恐れずに言えば「労働力統計の完全版」というイメージです。
国勢調査と同じく5年ごとに実施される就業構造基本調査によって集計され、全国約54万世帯の15歳以上(約108万人)を調査対象としています。
調査項目は労働力調査以上にバラエティに富んでおり、性別・年齢・生年月日・学歴・転居歴・ふだんの就労状態から、育児・介護関連、自己啓発・職業訓練の状態、仕事の詳細(テレワークの状況なんかも)、前職・初職の詳細などなど、就業者だけでなく無就業者についても同様に根掘り葉掘りヒアリングして、集計します。
こうして、定常的な(ふだんの)就業構造を知ることができるわけです。
ちなみに、この統計の利用者は、個人というより行政など組織がメインです。
例えば労働政策審議会や政府税制調査会における基礎資料として、また経済白書やワーク・ライフ・バランスレポートにおける分析や国民経済計算や産業連関表という基幹統計などに利用されています。
就業構造基本統計の最新結果は、2022年実施のこちらになります。
次に、賃金構造基本統計です。
厚労省により毎年実施される賃金構造基本統計調査によって集計され、主要産業に雇用されている労働者の賃金実態を明らかにすることを目的としています。
就業構造基本統計と同様に、こちらは「毎月勤労統計の完全版」というイメージです。
調査対象は、常用労働者5人以上の民営事業所と同10人以上の公営事業所で、性別・学歴・企業規模・産業・雇用形態・都道府県別など、とても詳しく調査されています。
例えば、このようなグラフが公表されています。
グラフを眺めてみると、賃金における学歴と性別の違いは、金額自体にも表れていますが、それよりもその上昇傾向(変動率)に強く影響を及ぼしていることが分かりますね。
こうして賃金の基本的な構造を掴むことができるのが、この統計の役割になります。
これ以上の詳細については、こちらをご参照頂きたいです。
まとめ
というわけで、労働に関する主な統計を一気に見てきました。
私たちの日常生活においては、完全失業率(労働力統計)や実質賃金(毎月勤労統計)は、その推移を眺めて見ることで、数カ月先の景気動向を予想し家計対策をするための「備え」として活かすことができます。
また、学歴・性・年齢階層別賃金(賃金構造基本統計)は、例えば子どもの将来を見据えた教育プラン作りに活かすこともできるでしょう。
今回は私たち個人にとって身近な(興味を持って頂けそうな)項目だけに的を絞ったので、もしかすると物足りなく感じた人もいるかもしれません。
そんな人には、ぜひ本文中のリンクから各統計のウェブサイトを訪れて、労働統計の奥深さを味わって頂きたいと思います。
世の中の動きを捉えてプライベートをより良くする一助として、労働統計を上手に活用していきたいですね。