長田FPオフィス

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統計を知ろう③人口統計

人は生きていくために食料を確保し、外敵から身を守り、安心できる住環境を整備しようと集まって、やがて自然に社会を形成します。

そうして社会が大きくなっていくと、一人ひとりの生活がより良いものになるよう、全体をとりまとめ様々なサービスを提供してくれる、みんなの(公の)ための委託先に対する需要が高まっていきます。
このような需要を満たすために生まれた委託先がいわゆる公的機関であり、私たちにとって最も大きな委託先が国になります。

そんな公的機関がサービス内容を検討する際、特に重要になってくるのが人口に関する情報です。
サービスの提供者としては、サービスを受ける人が「どれだけいるの?」「どこにいるの?」「この先どう移り変わっていくの?」ということを知る必要があります。

こうした人口に関する情報は、公的機関に限らず私たち個人の生活設計にとっても、とても役立つものと言えます。
例えば人口データ(人数や分布)は、日々の生活に密着している学校・病院など公共施設やスーパー・コンビニなど商業施設の数に関係しますし、個人商店の立地戦略を検討する際の重要指標にもなりえます。

また、役に立つかどうかは関係なく、単に人口データに興味あり、という人もいるでしょう(私のことです)。

というわけで今回は、様々なことを考えるうえで基礎データとして利用できる、とても便利な人口統計について、その概要と活用方法を説明していこうと思います。

日本の現状を知る:国勢統計

日本に暮らす人々の実情を最も良く反映し、国勢調査により作成されるのが国勢統計です。

特に重要な基幹統計の一つで、法律で直接規定されている基本中の基本と言える統計です。

国勢調査は5年に1度、西暦末尾が0と5の年の10月1日を基準に実施されます。
現在(2024年8月時点)の最新統計は、2020年実施の調査によるもので、次回の国勢調査は来年(2025年)10月に予定されています。

国勢調査の対象項目は、多岐に渡っています。
国籍、性別、生年月日、世帯主との続柄、世帯構成といった個人の基礎データにはじまり、現住所の居住期間、5年前(前回調査時)の住居地、就学状況(学歴)、就業状況(事業や仕事の種類から役職や通勤手段など)といった細かな属性データまで、調査によって私たちの暮らしについて幅広く情報を得ることができます。

その調査結果をまとめたものが、国勢統計として公表されるわけです。
5年に一度、日本という国の姿が顕わになるんですね。

国勢統計は、政府統計の総合窓口e-Statから誰でも閲覧可能ですが、調査項目が多いため、データ数・分類も膨大です。
ピンポイントで知りたい事柄があれば良いのですが、そうでなければ統計ダッシュボードを利用して、次に紹介する人口動態統計や国勢調査を基にした人口推計など他の統計データと組み合わせて、全体像をグラフとして見る方が取っ付きやすく便利だと言えるでしょう。

人口の変化を知る:人口動態統計

ここからは、人口動態統計について解説します。
日本人の日本国内における動きに基づき、毎月作成される基幹統計です。

対象とするのは、市区町村への届け出を基にした、出生、死亡、死産、婚姻、離婚です。
私たちの生活に身近な自治体に集められた毎月のデータ統計なので、正確性と即時性が期待できます。

この統計では死因についても分類しており、医師の死亡診断書(死体検視書)の死因をWHO基準に基づいて統計しています。
死因分類の結果を参考にすれば、例えばコロナウイルスなど世界的に流行した感染症による死亡者数や割合を、他国と比較することができます。

パンデミックの国際比較ができれば、国としては何が効果的な対策なのか、また個人としては何に気を付けた方が良いのか、それぞれのレベルで感染予防に有効な手段を検討する際、とても有益な情報になるわけです。

なお、日本国内在住の外国人や、日本国外における日本人については、年1回公表されます。

人口を推測する:人口推計

続いては、人口推計です。
こちらは、国勢調査を基に、人口に関する他の統計や業務資料を組み合わせて作成される、基幹統計の一つです。

具体的には、毎月初1日時点の人口(年齢階級別・男女別)や、都道府県ごとの毎年10月1日時点の人口を、各種統計データから推計することで作成されます。
先ほどの人口動態統計や、住基台帳、出入国管理統計、法務省資料などから得られる情報を基にして、推計が行われています。

人口推計を作成することで5年に一度の国勢調査の間の空白を埋めることが可能になるため、今の人口を高い精度で推測することができるというわけです。

また、多くの公的統計は、この人口推計を補助情報として利用しているため、単体利用での価値以上に重要な役割を担った統計だと言えます。

将来の人口は?:将来推計人口

最後に、将来推計人口をご紹介します。

国勢調査を基に、国立社会保障・人口問題研究所によって作成される統計ですが、私たちにとって何かと目にする機会がある、あの人口ピラミッドと言えばピンとくるでしょう。

こちらは基幹統計ではありませんが、これからの日本がどうなっていくかを考えるうえで、とても興味深い統計になります。

長期間の日本の人口推移が分かるよう、以下に4時点の人口ピラミッドを引用しました。
これを眺めて、ちょっと未来をイメージしてみましょう。

これらのグラフは同研究所のウェブサイトで閲覧可能(動画もあり)ですが、全国以外にも都道府県・市区町村などへスムーズに表示切替できる統計ダッシュボードもおススメです。

まとめ

過去から現在までの人の動きが分かれば、世の中が今どういう状態なのか把握できるので、ある程度の精度を保って将来どうなるのかを見込めるようになります。

人口統計とは、こうした性質を持つ情報です。
つまり、「人口統計なんて国や自治体だけのものだろう」と無視せずに、私たちの日常生活や将来設計に役立てることができれば、より豊かな人生が開けてくるはずなんです。

グラフを見て、「なるほどね、そうなっているのか」という新鮮な気付きが得られるだけでも面白さを感じますので、この機会に統計ダッシュボードを覗いてみてはいかがでしょうか?
もしかすると、何か知的好奇心をそそる発見があるかもしれませんね。

私たちの税金は、公的機関が提供するサービスの対価、つまり公的機関への委託料です。

「納税は国民の義務」と、上から目線で言われると逆に払いたくなくなるのが人情ですが、「個人の手に余ることを代わりにやってもらう委託料」と考えれば、少しは心穏やかに納得して払える気がします(税金の使途や額の妥当性は、別の話ですが)。

みんなの委託先である公的機関には、人口統計を上手に活用して、私たちの払った委託料を無駄のないよう使って欲しいですね。