私たちが何かに投資する際は、その投資に対する見返り(リターン)を期待するものです。
なかでも企業の株主になる株式投資の場合、配当金は大きな魅力の一つと言えるでしょう。
一般には、企業は出資者(株主)から集めた資金を元手に事業を行い、そこから得た利益の一部を配当金として、出資者へ還元します。
配当金を貰うのは「出資した見返り」というそもそも投資の本質なので、それを求めることは出資者として当たり前の要望ですね。
今回は、「株主になったんだな」ということを実感できる配当金について、特にそれを目的とする株式投資の特徴にフォーカスして、注意点も交えながらお伝えしたいと思います。
配当金とは?
まず、配当金の原資となるのは、事業によって得られる利益です。
基本的には、企業が1年間で稼いだ利益の一部が割り当てられますが、万が一その年に利益が出ていない状態、つまり赤字であっても企業によっては配当を維持するために、利益剰余金(事業開始からの累積利益)を原資とすることもあります。
ただし企業の稼いだ利益というのは、事業拡大や維持を目的とする設備投資や他社買収などにも充てられるため、そうしたイベントと重なる年は増益しても配当金が据え置かれたり、減額(減配)されたりすることもあります。
一般的に企業は年に1~2回、期末と中間配当による株主還元を行います。
配当金を受け取れる権利が確定する日は企業によって決められており、その日の2営業日前に当たる権利付き最終日までに株式を保有していれば、配当金が貰えるという仕組みです。
配当金額は「1株当たり○○円」と表記されるので、例えば1株当たり30円配当の株式を100株持っていれば、配当金は3,000円(税引前)になるわけです。
なお、株価(株式の取得価額や現時点での評価額)は、配当金額に影響を与えません。
それとは逆に、配当(その有無や金額)は、株価に影響を与えます。
投資を検討する際は、この関係性を混同しないように、気を付けましょう。
税金について
日本の税法では、配当金は配当所得に分類されており、配当金額の20.315%が課税されます(源泉徴収)。
もし外国株式から配当を受ける場合は、その国の税法に従って課税された後、残額に対して改めて日本の税法で20.315%が課税されます。
例えば米国株式の配当は、米国で10%課税された残額に対して日本で20.315%の課税です。
為替変動の影響を除くため1ドル100円に固定して、配当金が総額100ドルだったとすれば、手取り金額は以下のように試算できます。
【米国】
100ドル × (100% - 10%) = 90ドル(税引後)
【日本】
90ドル × 100円 = 9,000円(税引前)
➡9,000円 × (100% - 20.315%) = 7,172円(税引後)
米国側と日本側で二回も課税されていますが、この二重課税に対処するため、外国税額控除という制度が用意されています。
同様に、日本国内の配当についても二重課税に対処する配当控除という制度がありますが、どちらもけっこう複雑で本題から外れてしまうので、ここでは割愛することにします。
インカムゲインとキャピタルゲイン
配当金のように株式(配当を貰える権利)を保有しているだけで受け取れる収入のことを、インカムゲインと呼びます。
例えば債券の利子や不動産の賃料などの収入も、代表的なインカムゲインです。
それに対して、株価の変動による収入(株式の売買差益)は、キャピタルゲインと呼ばれています。
一般に投資で利益を得るといえば、キャピタルゲインでの儲けがイメージされがちですが、インカムゲインで利益を得ていくことも、十分有望な選択肢と言えるでしょう。
配当狙いの投資
ここでは、配当金を目的としたインカムゲイン狙いの株式投資について、いくつか代表的なものをご紹介します。
一つ目は、高配当株投資です。
配当利回り(後述)の高い株式を保有して、効率良く配当金を貰うというものです。
投資額に対するインカムゲインの割合を高めることができます。
二つ目は、連続増配株投資です。
こちらは、配当金の増配を継続している株式を保有するというものです。
毎年配当金が増えるということは、配当利回りが向上し続けることを意味します。
そのため、その株式を手放さずにいれば、いずれ高配当株投資に進化するわけです。
最後は、NISA口座の活用です。
NISA口座は非課税口座なので、配当所得にも課税されることはありません。
つまり、日本の税率20.315%は考えなくて良いわけです。
ただし、外国で課税される分はNISAの非課税対象外なので、気を付けましょう。
先ほどの米国株式の例で言えば、NISA口座で保有した場合、もともとの配当金100ドルは、米国で課税された税引後の90ドルに対して日本では課税されない、つまり90ドルをそのまま円換算した9,000円が手取り金額となります。
配当金を目的としたNISA口座の活用については、こちらの記事でも取り上げていますので、ぜひご覧ください。
配当金に関する指標
インカムゲインを狙って高配当な株式に投資したい場合、何をもって高配当とみなすのか、判断基準があった方が良いですよね。
そこで高配当かどうか客観的に判断するために、各種数値に対する配当金の割合を比較する指標が提案されていますので、それらを計算式とともに簡単に解説します。
1株当たり配当金 ÷ 株価
配当利回りとは、株価(出資者が株式投資に要する資金)に対する、配当金額の割合のことです。
出資者にとって、資金効率の良し悪しの目安となる指標と言えます。
一般には、だいたい3~5%を超える辺りから高配当とみなされます。
ちなみに、配当利回りの逆数を計算することで、配当金によって投資元金を回収できる年数が分かります(株価と配当金が今後ずっと変化しないという前提)。
(配当金総額+自社株買い総額) ÷ 当期純利益
※参考:配当性向 = 配当金総額 ÷ 当期純利益
総還元性向とは、企業のその年の利益に対する、配当金総額と自社株式を購入する総額の和の割合です。
一般に自社株買いにより発行済株式数が少なくなれば、1株当たりの配当金が増加するため、同様に株式の価値も上がり株価の向上が期待できます。
つまり、企業による株主還元の度合いを計るのに適した指標と言えます。
配当金と自社株買いを合わせて、どれだけ株主に報いてくれるのか、という企業側の姿勢を判断できるわけです。
配当金総額 ÷ 株主資本(純資産)
※さらに分解すると…
DOE =[配当金総額 ÷ 当期純利益] × [当期純利益 ÷ 株主資本(純資産)]
= [配当性向] × [ROE(自己資本利益率)]
DOEとは、企業の純資産に対する、配当金総額の割合です。
当期純利益は年ごとに大きく変動しがちですが、純資産の変動は小さいのが一般的なので、企業による株主還元の度合いについて、配当性向より安定的な尺度で計る指標と言えます。
また、DOEを分解すると、配当性向とROEの掛け算になります。
ROEとは純資産に対する利益の割合で、その利益を稼ぐのにどれだけ効率的に純資産を活用したか、という資金効率を表します。
つまりDOEは、配当性向という株主還元に関する指標、ROEという資金効率に関する指標、それぞれを(もしくは同時に)確認する際にも使えることが分かります。
注意したいこと
インカムゲインを狙って高配当な株式(連続増配なら尚良い)に投資すれば、安定的に多くの配当金を受け取り続けることも、夢ではないでしょう。
かく言う私も高配当株は大好きなので、先ほどご紹介した指標を参考にしつつ、自分に合う投資先を選定しています。
ただし、配当金を目的とする投資には、注意すべきことがあります。
特に、記念配当や特別配当などの一過性の高配当と、出資金を配当原資に充てるたこ足配当に気を付けて頂きたいです。
記念配当は「創立○○周年」など記念イベントに関する配当で、特別配当は資産の売却益など本業ではないところで思わず儲かった際に出る配当です。
どちらも通常の配当に上乗せされるため、その年だけ切り取れば高配当投資に見えますが、背景を知れば、それは一過性であり本来は高配当とは言えないことが分かるはずです。
また、たこ足配当は、その名前が「お腹を空かせた蛸(タコ)が自らの足を食べる」行為に由来する通り、実態は出資金を出資者に払い戻すだけの「なんちゃって配当」です。
利益が出ていない、現金の蓄えが不足している、という経営状態が良くない危ない企業が、株主を繋ぎとめるため無理やり配当する場合にみられます。
決算書を確認する手間さえ惜しまなければ見抜くことは可能ですが、これでは出資者の資産(お金)は増えるどころか減ってしまいますね。
こうした注意点があるため、高配当投資を検討する際は、配当金額や利回りといった目立つ数字だけで判断しないことが大切です。
過去の配当実績や原資となる利益についても確認したうえで、企業の配当方針が自身の目的に合う銘柄を投資対象とするのが賢明でしょう。
私にとって配当金とは、日々の株価の値動きに一喜一憂する必要のない、まさに株式投資における心のオアシスです。
「配当金を目的とするのも一興だ」と思うことができれば、株式投資に対する視野が広がるかもしれませんね。