長田FPオフィス

お金と正しく付き合うブログ

お金を借りる前に知っておきたいこと

住宅や自動車など高額なものを、個人が購入するとしましょう。
その際、手持ちの現金で一括払いできる人は多くないでしょう。
もしかすると車なら貯金で買える人はいるかも知れませんが、家となれば、ほとんどの人は住宅ローンのお世話になると思います。

また、日常の買い物をクレジットカードで済ませる人も少なくないと思います。
ネットショッピングはもちろん、実店舗で支払う際も便利なので、私は良く使っています。

これらの買い物では、各種ローンやクレジットカードを利用し「お金を借りて」いるので、要は借金して支払っていることになります。

そもそも響きが良くないこともあり、普段は借金という言葉はあまり使いませんよね。
でも借金自体は、実は身近なものとして、意識せずに利用していることが多々あります。
今回はそんな借金について、利用前に「知っておくとタメになる」というお話です。

借金の心得

一般に、「借金はするな」と言われますよね。
理由は色々あると思いますが、最も筋が通っているのは、「利子があるから、借りた金額より返す金額の方が多くなる」ではないでしょうか。

利子とは「借金の利用料」と説明されることが多いですが、具体的に言うと、必要なものを手に入れるのに「時間を買う」ための料金のことです。

私は、利子を払うことに少なからず抵抗を感じます。
また、他人にお金を借りると、例え問題なく返済できるとしても、それが終わるまで何だか居心地が悪くなります。
というわけで、基本的に私は「なるべく借金しない」という姿勢でいます。

しかし、借金も使い様によっては「しても良い」または「した方が良い」場合があります。

住宅ローンや自動車ローンなど今必要だけど自己資金が足りない場合や、クレジットカードのように現金代わりに便利に使う場合が、そういった借金に該当します。

前者はローン金利分の利子を支払うことになりますが、後者は支払い回数2回までなら利子は発生しません(借りた分だけ返せば完済。ただしキャッシングは1回目から利子発生)。
つまり、前者は時間の方がお金より価値が高く、後者は料金不要(利子無し)でOK、だから利用しても良い・した方が良い、ということになります。

一言付け加えておくと、ここで話題にする借金は「計画的に返済できる」ことを前提にするものであって、いかなる場合でも無計画な借金は論外です(当たり前ですが念のため)。

このように借金は、無理ない返済計画を考え上手に利用すれば、お金と生活の質をバランス良く調整できる、とても有益なツールになるわけです。

借りるにも限度がある

ところで、借金を利用するには、お金を貸してくれる相手が必要ですね。
通常は、銀行や貸金業者(消費者金融や信販会社など登録業者)が該当します。

この貸金業者が事業を行う際、順守すべき法律として貸金業法というものがあります。

貸金業法では、消費者(借金の利用者)を保護する目的で総量規制という制度を導入して、多重債務の原因となる過剰な貸付を禁止しています。

総量規制により、貸金業者から借入できるお金の上限額は、合計で「年収の3分の1まで」と定められています(参考:日本貸金業協会)。
例えば年収600万円なら、何社の貸金業者から借金しようとも、全て合計して200万円が上限です。

消費者の借入残高は信用情報機関が管理しており、そのデータを基に貸金業者は消費者への貸付可能額を把握することができます。

一般的には総量規制によって過剰貸付が抑止されていますが、だからといって無条件に安心できることにはなりません。
実は総量規制の対象にならない貸付があることに、私たち消費者としては注意が必要です。

総量規制から外れるもの

対象外の主なものは、住宅ローン自動車ローン(条件あり)です。
また、銀行カードローンクレジットカードを利用した買い物も、そもそも貸金業法の対象にならないため、総量規制の対象外です。

クレジットカードの利用について正確に言えば、買い物の支払いを分割払い・リボ払いすると対象外キャッシングで借金すると総量規制の対象、と別扱いになります(ややこしい)。

カードローンとリボ払いは、個別契約で設定された利用上限の範囲内であっても、それらを繰り返し利用し続けると借入残高が思うように減らず、手数料(利払い)負担が増えていくことになります(参考: リボ払いをおススメできない理由)。

これらは総量規制にカウントされないので、消費者自身による厳格な管理が求められます。
こうしたことから、カードローンとリボ払いは、完済の難易度が高い借金と言えます。

いずれにしても、借入の際は「総量規制があるから」「利用上限があるから」と安心せずに、計画性を持って利用すべきですね。

ちなみに、お金を貸す側が設定できる上限金利は、貸付額に応じて年利15~20%、と法律で定められています(利息制限法および出資法)。
貸金業者がこれを超える金利で貸し付けを行うと刑事罰の対象になることも、覚えておくと良いでしょう(違法な業者なので、近寄らないためにも)。

破産と再生のマメ知識

ここからは、ブログが「役に立った」と言われても、私としては複雑な心境になってしまう内容です。
というのも、借金が大きく膨れ上がって首が回らなくなった場合に生き残る手段について、ご紹介するからです(そもそも、そんな状態になって欲しくない)。

仮に、カードローンとリボ払いで多重債務を負ってしまい、返済が困難(現実的には不可能)になったとしましょう。

この場合、まず貸し手である債権者と借り手である債務者が、弁護士や裁判所を介して話し合う「任意整理」や「特定調停」で解決を目指しますが、それでも借金を整理(完済)できる見込みがない場合は「個人再生」手続きや「自己破産」を申し立てることになります。

このうち個人再生は、「安定収入はあるけど破産する懸念もある」債務者が対象となります。

借金のうち、住宅ローンを除いた債務が5,000万円以下であることが必要ですが、債務者は、原則3年(最長5年)の間、裁判所に認定された再生計画に従って返済を継続すれば、残りの借金は免除されます。

さらに、住宅資金特別条項の利用により、持ち家を維持することができます。
だからといって住宅ローンの支払いは免除さませんので、この点は要注意です。

一方、自己破産は、文字通り「破産して」借金をチャラにしてもらう最終手段です。

債務者が生きていくうえで必要最小限のものを除き、全ての財産を換金し債権者への返済に充てることで、残りの借金が免除されます。

自己破産すると、その事実は官報に掲載され、一定期間は就業(警備員や保険募集人などになれない)や居住(裁判所の許可なく転居や長期旅行できない)など、様々なことに制限を受けるようになります。
また、債務の免責を受けた後7年間は再び自己破産できません。

借金チャラの効果は絶大ですが、その分、軽々しく申し立てられるものではないわけです。

なお、自己破産した情報は信用情報機関に登録されますが、戸籍には記載されません。
クレジットカード作成やローン利用の審査には影響がありますが、選挙権や被選挙権を失うことはありません。
なので、ウソの情報で不安を煽って、自己破産させず骨の髄まで搾り取ろうというような、悪質な債権者の脅し文句に惑わされないようにしましょう。
…その前に、そんな状況まで追い込まれないことの方が、よっぽど大事なんですけどね。

さらなる詳細は、裁判所の公式ウェブサイトで確認できます。
もっと知りたい人は、こちらの「個人再生」「自己破産」を、それぞれご参照ください。

というわけで、ここまでお伝えしてきた身としては、この情報を役立てる日が来ないことを願うばかりですが、一方では、万が一の場合に「生きていれば何とかなるさ」と開き直って再起を図るための処方箋として、今回の話を頭の片隅に入れておいて頂ければと思います。

車やハサミと同様に、借金は使い方を間違えると危険ですが、正しい知識のもと上手く利用すれば、人生をより豊かにできる便利な道具になってくれます。
このことを忘れずに、自身のライフスタイルと合うように、適度な緊張感と計画性を持って借金を賢く活用していきたいですね。