長田FPオフィス

お金と正しく付き合うブログ

リボ払いをおススメできない理由

どうしても欲しいものがある。
でも手元のお金じゃ足りない。

そんな経験をしたことはありませんか?

一般的には「お金が無いなら買わない」が正解ですが、「借金(ローンを利用)してでも買う」という選択が採られる場合もあります。
確かに、住宅や車など金額の大きなものを購入する場合は、借金して早く手に入れるという選択は有効だと思います。

一方、贅沢品などちょっと高いものを買う場合、借金(ローンを利用)はあまり良い選択肢とは思えませんが、手軽にしてしまう人もいるようです。

今回は、手軽にできる借金のなかでも特に注意が必要な「リボ払い」を取り上げます。
リボ払いについて簡単に説明してから、シミュレーションをご覧頂こうと思います。

はじめにお伝えしておきますが、私はファイナンシャルプランナーとして、リボ払いの利用はお勧めしません

ただしそれは、このサービス自体が悪いというわけではありません

では、なぜ勧めないのか?
その理由についても、お話ししたいと思います。

リボ払いとは?

まずリボ払いの概要を見ていきましょう。

リボ払いとは、借金の支払い方法の一つです。
一般的には、クレジットカードで買い物をする際に利用できるサービスです。

言葉としての「リボ」は「リボルビング(revolving)」の略で、回転することを意味します。
杓子定規に説明すれば、債権者(信販会社などのサービス提供者)によって債務者に与えられた信用を回転させる(一定額を定期的に返済させる)ことが、リボ払いになります。
利用者からすると、買い物の代金は毎月ほぼ定額の後払いで良い、ということになります。

このサービスの利用には、手数料(いわゆる利子)が発生します。
この手数料は、リボ払いを利用した合計借金残高に対して計算され、だいたい年利15%程度が一般的です。

これと似ているサービスに「分割払い」がありますが、分割払いは買い物1件当たりの個別借金残高に対して手数料が計算されます。
分割払いと違いリボ払いでは、複数の借金を合計して(個別ではなく)一元管理することができるわけです。

なお、リボ払いの支払い方式には、定額方式、定率方式、残高スライド方式がありますが、ここでは割愛します(重要な論点ではないので)。

こうして説明を受けると、リボ払いは便利なサービスみたいで、なんだか良さそうに思えてこないでしょうか?
でもちょっと待ってください。
先ほど、リボ払い利用は注意が必要とお伝えしましたが、実はその理由、それが「良さそうに思える」ことなんです。

計画性

一見すると良さそうなサービスに思えるため、将来の自分の行動を深く考えることなく安易に利用してしまう、これがリボ払いの落とし穴になります。

人間は、何かしらの試算をすることによって、(正しい・正しくないは問わず)それに基づく計画を立てることができます。
しかし、実際に計画通り機械的に行動できるのは、ごく僅かな人に限られるでしょう。

「計画通りに動けなかった」そんな経験、身に覚えはありませんか?
そうです、私がリボ払いをお勧めしないのは、そのサービスの良し悪しではなく、人間には「計画的に行動するのは難しい」という性質があるからなんです。

そもそもリボ払いを利用する時点で、その利用者は「計画性」の無い人です。
だって、お金が足りないのに、買い物をしようとしているんですからね。
そんな「計画性」の無い人にとって、リボ払いは本当に便利なサービスなんでしょうか?

誰にとって便利なものかを考える

リボ払いは通常、誰にとっても利用しやすく「便利なもの」として設計されています。

業者(サービス提供者)は、利用者が受けられるリボ払いのメリットとして、①急な出費や高額な買い物に利用できる、②家計管理しやすい、などを謳うことが多いです。

しかし落ち着いて考えてみると、それらは「計画性」の無い利用者側のメリットではなく、「計画性」のある業者側のメリットであることに気付けると思います。

分かりやすく業者側の立場で言い換えれば、①は「計画性の無い人にお金を貸すことができる」、②は「計画性の無い人からの返済を管理しやすい」、となります。

つまり、簡単にお金を借りてくれる人がいて、その人に貸したお金は定期的にほぼ定額で返済され、さらに金利(年利15%程度)が高いので返済期間が長くなればなるほど(一回当たりの返済額が少なければ少ないほど)、安定した手数料収入が得られるという仕組みです。

こうして考えてみれば、業者にとってリボ払いほど効率的で「便利なもの」はない、ということが分かりますね。

シミュレーションから見えてくること

ここからは数字を見ながら、リボ払い利用のイメージを膨らませてみましょう。

シミュレーションの共通条件は以下になります。

共通条件

【利用上限額】20万円
【返済方法】利用翌月から定額月払い(元利定額方式)を開始
【手数料】年利15%(月利1.25%)
     ※計算手順
      (手数料)=(前月の借金残高)×1.25%
      (元金返済)=(返済定額)-(上記の手数料)

返済額のうち元金と手数料(利子)の内訳と、借金残高を毎月算出していきます。

基本は総額20万円の買い物で、リボ払いを利用するとします。
条件を変えて3つのシミュレーションを行いましたので、それぞれ表にします。

まずは単月で利用した場合です。

2024年6月に20万円(元金)を利用したため、翌7月から支払い開始です。
返済完了は2025年5月で、手数料総額は約1万5千円(元金との比率は7.5%)でした。

続いて、複数回の買い物をして、利用月が異なる場合です。

こちらは、2024年6月に10万円、同8月に10万円、総額20万円の利用です。
それ以外は、先ほどのシミュレーション1と同じ条件です。

シミュレーション1・2を比較すると、返済完了の時期は同じ、手数料総額は2の方が小さく約1万2千円(元金との比率は6.1%)でした。

手数料は前月の借金残高に応じて増減するので、毎月の残高の2の負担が軽くなりました。
このことは、なるべく早く残高を減らす(元金返済を多くする)方が、手数料総額を安くできることを示しています。

もう少し分かりやすくしてみると、次のようになります。

シミュレーション2との違いは、毎月の返済額を1万円に減額した点のみです。
たったこれだけの変更にもかかわらず、返済完了は2026年5月まで1年も延び、手数料総額は約2万8千円(元金との比率は14.2%)と2倍以上になりました。
残高は早く減らした方が良いことが、良く分かりますね。

いずれにしても、最も注意すべきは、シミュレーション1のような単発利用では大した負担にならない人が多いため、それで滞り無く返済を終えると、「リボ払いって意外と使い勝手が良いものだ」と勘違いしてしまうことです。

もし、それで再びリボ払いを利用することになれば、最初の成功体験で気の緩みが生じて、利用分を返済している間にも、二重三重と次々に利用を追加してしまうかもしれません。

そうなると手数料の支払い負担が増えて、元金を減らすペースは落ちていきます。

さらに時間が経てば経つほど累計手数料は大きくなるばかりで、いつまで経っても支払いは完了せず、気付いたら借金を返すために新たな借金が必要になり、無間地獄に落ちていく…なんて危険が潜んでいます。

仮に利用回数を増やすとどうなるか、ご興味があれば補足を開いて確認してみてください。

こちらは、シミュレーション3に2025年1月から累計20万円の新規利用を加えたものです。
全期間での利用総額は40万円、返済完了までは最後の利用を終えてから2年後の2028年7月、手数料総額は約8万2千円(元金との比率は20.5%)でした。
利用総額(元金)は2倍になったのに対し、それ以上に手数料総額は3倍も膨れ上がってしまいました。

まとめ:なぜリボ払いを勧めないのか

繰り返しになりますが(そして厳しい言い方になりますが)、リボ払いには、「そもそも計画性が無いから利用するハメになる」、という出発点があることを忘れてはなりません。

そして、「計画性の無い自分が、果たして一回だけの利用で済むのか?」と考えるべきです。

…でも、どちらも実践するには、すごくハードルの高い要求ですよね。
率直に言えば、普通の人には無理な話だと思います(少なくとも私には無理)。

というわけで、リボ払いをお勧めしない理由は、「計画的に行動するのは難しいから」という精神論に行き着きます。
自制心がゴリゴリに強い人でない限り、リボ払いの利用は止めておいた方が良いわけです。

「買い物は借金せず支払える範囲にしよう」、こんな当たり前がとても大切だということを、くれぐれも忘れないようにしましょう。