他人のお金を騙し取ることは詐欺です。
「詐欺師の手口に引っかからないよう気を付けましょう」…と、世界中で叫ばれているにもかかわらず、現実にはお金を騙し取られる人が後を絶ちません。
詐欺の被害になんて、遭いたくないですよね。
そこで今回は、身近に潜む詐欺から身を守るためのアドバイスをお話ししたいと思います。
なかでも特に金融系の詐欺として、世代を問わず被害が後を絶たない(むしろ増加している)投資詐欺の代表例をご紹介します。
その仕組みを知っているだけでも詐欺に対する予防線は張れるはずなので、ぜひ参考にして頂きたいです。
詐欺なのか見分けられる?(詐欺師と詐欺行為)
目の前にいる人が詐欺師で、その人が詐欺行為を行おうとしている。
そういったことを明確に認識できれば、(自ら進んで詐欺に遭いたい人以外は)騙されることはないでしょう。
そこで、①詐欺師、②詐欺行為、のそれぞれを見分けることができるのか、ちょっと考えてみましょう。
まず、①についてです。
一般的に詐欺師というのは「清潔感のある身なり」「人当たりが良い」「話し上手」「気遣い上手」なので、「なんだか信頼できそう」という特徴があります。
でも、詐欺師ではない本物の素敵な人も同じ特徴を持っているため(もちろん詐欺師が本物に似せているのですが)、詐欺師を見分けるのは表面上とても難しい(ほぼ無理)です。
それに人を見る度に詐欺師かどうかを疑うなんて、人間関係にも精神衛生にもよろしくないですよね。
なので、「①詐欺師」を見分けることは諦めましょう。
では、②詐欺行為かどうか見分ける方はどうでしょう?
こちらは、予め知識を持ち合わせていれば、さほど難しくはありません。
万が一、詐欺行為に巻き込まれそうになっても、予備知識さえあれば、いったん落ち着いて深呼吸してみることで、怪しい点に気付けるからです。
そして、人を疑ったりメンタルを消耗したりする必要もありませんね。
というわけで、「②詐欺行為」を見分ける方法を、詳しく検討していきましょう。
詐欺の手口には様々なものがあり、加えて巧妙な仕組みも次々に生まれているので、残念ながら全てを把握することは不可能です。
そのため100%保証された対処法というものはありません。
とはいえ、知っていることを基にして自ら考え判断するという「知識の応用」ができれば、たいていの詐欺は避けられます。
これからご紹介するのは、そんな知識として最も役立つ、知っておいて損は無いものです。
それは、投資詐欺の王道「ポンジ・スキーム」です。
投資詐欺ポンジ・スキーム
このポンジ・スキームという名前は、アメリカで有名になったチャールズ・ポンジという詐欺師に由来します。
イタリア出身の彼は、21歳で渡米して以来、その頭脳と人間性を武器に投資会社を立ち上げ大活躍します…もちろん悪い意味で。
彼の行った投資詐欺は、出資金詐欺として、現在でも十分通用する仕組みです。
そんなポンジ・スキームを簡単に説明すると、こうなります。
➡投資会社は「○○投資では、高利回りの配当(利息)が安定的に得られます」と宣伝
➡その謳い文句に釣られた複数の出資者(投資家)から、○○投資の出資金を集める
➡定期的に約束された配当金を支払い、出資者を安心させ○○投資の信用力を高める
➡そのうえで出資金を増額させつつ、さらに別の出資者を呼び込む
➡数回これを繰り返した後、出資金が集まってきた頃合いを見計らいトンズラする
実際には、出資金の一部を配当金の支払いに充てるだけで、○○投資は行いません。
例えば、投資募集において、1口当たりの出資金額100万円、毎月の配当金額5万円を保証、と謳われているとしましょう。
もしこれが本当なら、1年間で累計60万円もの配当金を得られることになり、利回り(単利)は160%です。
これに1口出資して、最初の3カ月間は定期的に5万円ずつ配当金が支払われると、15万円の収入が得られるだけでなく、「どうやらこれは良い投資だ」という安心と信用が膨らみます。
このタイミングで「もう1口追加で出資してみませんか?」と言われたら、その気になる人は少なくないでしょう。
そうして合計200万円を投資した出資者は、4カ月目の10万円の配当金を楽しみに待つことになります。
でも、その後は期日になっても配当金は支払われず、数日しても音沙汰無し。
そこで出資者は投資会社に連絡を入れますが、電話は通じずe-mailも返信無し。
ホームページもいつの間にか無くなっていて、不安がピークに達します。
もう我慢できず、最終的に投資会社の住所を訪ねてみると、そこは空家になっていた…
これがお決まりのパターンです。
トンズラした詐欺師には、収入200万円(出資金)から支出30万円(配当金)を差し引いた170万円が利益として残るわけです。
「現実味の無いバカみたいな話だ」「こんな話に引っかかるヤツはいない」と思われるかもしれませんが、実際に起こっている投資詐欺のほとんどは、このポンジ・スキームと同じ流れのものなんです。
特に、自分は騙されないという自信がある人は要注意です。
詐欺師にとっては、そういう人が一番のカモになります。
なぜなら詐欺師は、○○投資に対する信用(儲かりそうだという安心)だけでなく、出資者が自らに対して持つ信用(騙されないという過信)も利用して、投資詐欺を行うからです。
投資にはウマい話など無い
詐欺師に利用される対象が何であろうと、「○○投資は儲かって良いもの」だと信用してしまう一番の理由は、「約束通り定期的に配当金の入金がある」からです。
ただし先ほどの説明のように、それは本当の配当金ではなく、配当金に見せかけた元金の取り崩し、つまり支払った出資金が定期的に返却されているだけです。
当初は「怪しいかも?」と不安に思っていたはずなのに、何回か約束が守られると次第に不安は和らいでいき、やがて「配当金が貰えている」という安心に変わります。
そこへ「自分は騙されない」という過信の相乗効果が加わることで、「ウマい話に乗れた」と勘違いしてしまいます。
こうして、分かっていたのに騙される人が、後を絶たなくなるわけです。
本当にウマい話があるのなら、それを見つけた人は誰にも言わずに自分だけで取り組むはずだと思いませんか?
この感覚を持っていれば、誰かに「私は十分お金を稼いだので、同じように多くの人に豊かになって欲しいと思い、あなたにも○○投資をご紹介したいんです」などと、もっともらしく言われても、意味が分からない怪しい話だと気付くことができるはずです。
もし他者に還元したいという善意があるなら、その人はひたすらウマい話に取り組み続けて利益を上げつつ、そこで儲けたお金をそのまま世間に配れば良いだけですよね。
他人に余計なことをしたり・させたりする必要はありません。
つまり、この世のどこにも「ウマい話は無い」、もし「あったら詐欺」ということなんです。
誰の目にも、ほとんどのウマい話は魅力的に映ります(そういうふうに作られているので)。
しかし、「あったら詐欺」の具体例としてポンジ・スキームを知っておくだけでも、投資詐欺にハメられるリスクはぐっと減ると思います。
そういう観点からも、今回のお話を「詐欺から身を守る」ちょっとしたお守り代わりにして頂けると嬉しいです。
参考サイト:詐欺的な投資勧誘等にご注意ください!: 金融庁 (fsa.go.jp)
ポンジ・スキームとは別に、人が人を紹介して出資者を増やしていく階層化(ピラミッド型に組織化される)スキームが、いわゆるネズミ講です。
ネズミ講は人と人との繋がりを利用するもので、「あの人がやっているから大丈夫」「友達が勧めてくれたものだから安心だ」という理由でコロッと信用してしまう、という詐欺です。
ポンジ・スキームとネズミ講、どちらも単体でも機能する詐欺ですが、実際にはこれらが組み合わされて大規模な被害に発展するパターンが多いです(詐欺師にしてみれば、その方が儲かるので)。
ネズミ講は、お金を騙し取られるだけでなく人間関係を壊す、とてもタチの悪いものです。
人生に再起不可能なダメージを与えかねないので、くれぐれも用心しましょう。