資産運用にはリスクが伴います。
代表な運用手段である株式投資に対しては、リスクが高いからギャンブルだ、などと言われることもありますね。
ですが、そもそもリスクとは何のことを指すのでしょうか?
「資産価値が減る危険」のことを「リスク」と認識されている方が多いように思えますが、お金の話をする場合、その認識は正しくありません。
では、リスクとは何なのか?
今回はリスクについて、理解を深めていきましょう。
不安な未来を推測する
お金の話、つまり経済・金融分野では、未来の状態を推測することが極めて重要です。
例えば、現時点で保有している資産の価値が増えるか減るか、この先どうなるかを予め知りたいわけです。
世界・国家レベルのマクロな場面でも、家庭・個人レベルのミクロな場面でも、この重要性は変わりません。
その一方、未来に起こることをコントロールできるくらい高精度に推測することは、とても困難です。
それでも何も手掛かりがないままでは、不安が募るばかりです。
不安を和らげようと、経験則や数学的手法などを用いて、ある程度の精度で未来を推測する試みがなされます。
推測の誤差
未来を推測する試みは、世の中にたくさんあります。
個々については紹介しませんが、その全てに共通することがあります。
それは100%の精度で当たるものはない、つまり推測には「不確かさ」があるということです。
過去の経験やそれを基にした仮説や数学的なシミュレーションなど、どの方法にしても「未来を確実に当てる」のは不可能です。
それらの推測結果には固有の精度があり、必ず誤差を伴います。
誤差というのは、推測自体の不確かさの物差しです。
そこで、推測結果と誤差を数字で表すことができれば、推測結果からの変動を数字で捉えられるようになります。
不確かさが「目に見えるようになる」わけです。
リスクの正体
未来を推測する際に排除しきれない不確かさは、悪いことが起こる可能性があるので、一般的に「リスク」を意味します。
まさに不安の源と呼べるものですが、それを数字で捉えることができれば、一定の範囲内でコントロールが可能になります。
そこで専門家たちは、お金の話をする場合の「リスク」を、不確かさを数値化した「推測結果からの変動」と定義しました。
こうすることで、将来の悪いことが起こる可能性がどの程度か数字で把握できるようになり、予め備えを講じられる様になったわけです。
ボラティリティ
さて、ここで注意したいのは、お金の話においてリスクとは変動のことなので、悪いことだけでなく良いことが起こる可能性も含みます。
資産価値が「減る」場合だけでなく「増える」場合も、どちらも「リスクがある」ということになります。
一般的な資産運用においては、用語の解釈に誤解を生じさせないため、この増えたり減ったりする変動性のことを「ボラティリティ」と言います。
聞き慣れない言葉かもしれませんが、理解するのはさほど難しくないので、株式を例に説明します。
ある銘柄の株価が急に値上がりして、一日で-10%変動した場合はボラティリティが高い状態で、この日の銘柄はハイリスクだったことを意味します。
反対に急に値下がりして、一日で+10%変動した場合もボラティリティが高くハイリスクであり、リスクの度合いは先ほどの-10%変動と同じ、つまり株価が上がっても下がっても同リスクということです。
リスクが無い状態(ゼロリスク)とは株価が変動しなかったことを意味するので、ボラティリティはゼロの状態です。
投資の世界でボラティリティと言えば、厳密には「これまでの傾向からの変動しやすさ」を意味します。
つまり、株価の動きが過去からずーっと+1%上昇で一定(これまでの傾向から変化しない)なら、ボラティリティはゼロになります。
投資指標の一つであるボラティリティ指数(VI)の試算も、これが前提になっています。
というわけで正確には、株価が変動しないことをボラティリティがゼロとは言いませんが、普段使いにおいては大差ないので、あまり気する必要はありません。
ややこしくなって理解できなくなるより、「(正確じゃないけど)だいたいこういう意味」と分かっている方が大切です。
リスクとリターン
資産運用におけるリスクとは資産価値の変動性、つまり「ボラティリティ」で表されることを見てきました。
ここまでリスクに焦点を絞ってきましたが、最後にリターンについても考えてみましょう。
資産運用においてリターンを得るためには、安く買って高く売ることが基本となります。
つまり、資産価値が変動する(ボラティリティがある)ことは、リターンを生むために必要不可欠だと言えます。
これが「リスクとリターンは表裏一体」と言われるゆえんです。
ボラティリティがあること=リスクをとることは、リターンの源泉に他なりません。
株式投資などの資産運用をギャンブルにしないためには、投資対象のボラティリティを理解し、自身のリスク許容度を知ることが大切です。
「リターンを追い求めるあまり、リスクを取り過ぎて大損した」なんてことにならないよう注意しつつも、投資を過度に怖がらず、適切な資産運用を実現するための強力なツールとして、リスクと上手く付き合っていきましょう。