長田FPオフィス

お金と正しく付き合うブログ

あと何年で資産は倍になる?

もし誰かに、「私にお金を預けたら10年後には2倍に増やしてみせますよ」なんてことを言われたら、どう思いますか?
私だったら、「そんなウマい話があるわけない」と、まず詐欺を疑うでしょう。

でも実は「他人に預ける」ことを除けば、「○○年後にお金を2倍にする」のは、自身で資産運用を行うことで、意外と簡単に実現できるんです。

というわけで今回は、資産倍増のお話です。
具体的には、運用で資産が倍になる年数を計算してみる、という実用的な内容になります。

そのなかでも、「コツコツ計算するのは面倒」という人に向けて、とても簡単で暗算に使える便利な法則をご紹介したいと思います。

複利で増える資産の計算

まずは資産の増え方について、簡単に整理しましょう。

株式など取引相場のある金融商品では、その時々の状況に応じて資産価額(評価額)が変動します。
そして、金融商品を買ったときの取得価額と売ったときの売却価額との差額が損益で、その損益を保有していた期間で割り算したものが運用利回りになります(別途、配当金や手数料などあれば、損益に算入します)。

金融商品を保有している間、通常その運用利回りは複利で計算されます。
一般に、1年間(1月間)における利回りのことを年利(月利)と呼んでいます。

前回お伝えしたように、複利では保有資産残高に対して年利(月利)分の利益が毎年(毎月)加算されていきます。
その際は一括投資の例をご紹介しましたが、それが積立投資になると、計算量が大幅に増加します。

例えば、年利の利率は一定として、年1回だけ資金を拠出する積立投資を10年間(合計10回)行った場合、10年後(積立開始から11年目を迎えた日)の資産残高は、以下のような計算になります。

これを計算すれば、10年後の元利合計(資産残高)を求めることができます。
同じようにして元利合計が2倍になるまで計算を繰り返していけば、何年後に2倍になるかを算出できるわけですが、私だったら途中で嫌になってしまいます。

もっと簡単に(できれば一発で)2倍になる年数を知りたいですよね。
というわけで、ここからはとても役立つ法則たちに登場してもらいましょう。

一括投資は「72の法則」

まずは一括投資の場合です。
資産運用のスタート時点で既にまとまった資金があって、それを元金として運用する(追加投資無し)としましょう。

ここで活躍するのが「72の法則」です。

資産が2倍に到達するまでの期間、年利は常に変化しているのが一般的ですが、これから行う計算では運用期間中の年利は一定とみなしたうえで、想定(期待)する年平均利回りで代用します。

そうすることで、計算に使う数式は、このようになります。

①72の法則【一括投資で2倍】

実にシンプルで良いですね。

これを使って計算した、一括投資で2倍になる年数と利回りの関係を、以下のグラフにまとめました。

利回りを7%と想定すれば、だいたい10年で2倍になります。
ちょっと控え目に5%としても、15年あれば到達できるわけです。

いかがでしょう、まさに「果報は寝て待て」の神髄ここにあり、ですね。

積立投資は「126の法則」

続いては、積立投資です。
今度は毎月1回(年12回)一定額を拠出して、元金を増やしながら運用していく場合を考えてみましょう。

ここで使うのは「126の法則」です。

この法則は、枇々木規雄氏により日本FP学会のニュースレターとして報告されたものです。

到達年数と年平均利回りの関係を示す計算式は、72の法則(①)と同様こちらになります。

②126の法則【積立投資で2倍】

これを使って計算した、積立投資で2倍になる年数と利回りの関係を、以下のグラフにまとめました。

一括投資に比べるとゆっくりではあるものの、想定する利回りが7%なら18年で、10%なら13年あれば、それぞれ2倍に到達可能という結果になっています。

例えば、NISA口座を利用して毎月5万円を20年間に渡って積立投資するとしましょう。
投資対象の年平均利回りが6.3%であれば、積立元金1,200万円は、20年後には2,400万円まで成長する(2倍になる)というわけです。

このように126の法則は、とりわけ老後資金の準備をはじめたい人が、事前に手っ取り早く試算を行う場合において、とても使い勝手の良いものだと言えます。

ちなみに、積み立て頻度を、年12回(毎月)ではなく年1回とする場合は、「125の法則」を使えば同じように計算できます(②式の126を125に変更するだけです)。

まとめ

それでは、これまでの内容をまとめます。

72の法則と126の法則を並べて表記することで、資産が2倍になるまでの年平均利回りと期間の関係を、より見やすいものにしてみました。
それが以下の表です。

現実の世界では、株式などの運用利回りは一定ではないため、この計算結果は運用開始前の目安に留めておくべきです(特に数年程度の短期ではブレが大きいので)。
ただし、長期(15-20年以上)投資の観点からすると、株式市場全体は右肩上がりに上昇していく傾向にあるため、最終的にはこの表に近い結果を期待できます。

また、どちらの法則も便利とはいえ、あくまで実用面を重視した簡易計算用のものです。
そこで、厳密に計算したいという人は、高校数学で学んだ(当時は何の役に立つのか分からなかった)数列の公式を使いましょう。
それぞれ以下のように対応しています。

数式なんて見たくない人もいらっしゃると思うので、これ以上の詳細は割愛しますが、ご興味あればウェブで検索してみてください(簡単に出てきます)。

資産を倍増させるためには、優良な投資対象の選定長期投資を継続することが大切です。
たとえ弱気相場が訪れても投げ売りせず、じっと下落に耐える「我慢」が必要になります。

万が一、資産運用が辛くなるような局面が訪れたら、72の法則や126の法則を思い出して、あと何年で2倍になるかカウントダウンしてみましょう。
そうして忍耐力を維持することができれば、いずれ目標としていた成果が得られるはずです。

資産運用をはじめる前の目安を計算するだけでなく、運用を続けていく心の支えとしても、これらの法則を上手に活用していけると良いですね。

「2倍なんてセコイこと言わず、3倍を目指すんだ!」という人もいらっしゃるでしょう。
というわけで、3倍を計算する法則もご紹介しておきます。

一括投資は「115の法則」、積立投資は「190の法則」です。

①式の72(もしくは②式の126)を、それぞれ115や190に変更するだけです。
計算結果をまとめましたので、こちらの表をご参照のうえ、夢を膨らませてくださいね。