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複利のチカラ

いつの世にあっても資産を運用している人(しようと思っている人)は、自身の運用資金が増えていく未来を何より期待するものです。

そうした期待を実現するためには、どれほどの運用利回りを見込むべきかを、予め検討しておく必要があります。
特に「○○年後には×××万円の資産を形成したい」という目標がある場合は、なおさらです。

ところで、将来の運用結果にとって重要な利回りについて、それを計算する方法には、単利複利の二つがあることをご存じでしょうか?

おそらく、「聞いたことはあるけど具体的な違いは分からない」、という人が多いのではないかと思います。

資産運用、とりわけNISAなどを利用して数十年単位で行う長期投資においては、複利の効果が絶大な威力を発揮します。
そこで今回は単利と複利の違いを簡単に説明したうえで、いったい複利の何がすごいのか、とても興味深いその本質をご紹介していきます。

単利と複利の違い

はじめに、資産運用における単利と複利について確認してみましょう。

ここで対象とする運用利回りは、期間が1年の利回り(年利)とします。

さらに話をシンプルにするため、運用資金の拠出は1回だけ(一括投資)、年利の利率は一定(長期投資における「年平均利回り」と同じ考え)とします。

すると単利と複利は、それぞれ以下のように説明できます。

言葉だけでは分かりづらいので、例として、元金100万円、年利5%で運用する場合の数字を見ていきます。

単利の場合、最初に元金に回した資金100万円に対して、1年ごとに年利5%の利益(利息)が生まれます。
元金には手を付けずそのまま運用を継続していくと、資産は元利合計で、1年後:105万円、2年後:110万円、…10年後:150万円と、5万円ずつ定額で増えていきます。

一方、複利の場合、当初元金に回した資金100万円に前年まで生じた利益(利息)を加えた資産に対して、1年ごとに年利5%の利益(利息)が生まれます。
元金には手を付けずそのまま運用を継続していくと、資産は元利合計で、1年後:105万円、2年後:110.25万円、…10年後:162.89万円と、5%ずつ定率で増えていきます。

このように計算してみると、単利と複利では、10年後の資産にだいぶ差が開くことが分かりますね。

数字を並べてみると…

もう少し深く単利と複利の格差を知るために、時系列に沿って数字を比べてみましょう。

以下のように、それぞれの運用結果について、20年後までの推移をグラフにしました。

こうして視覚化すると、時間が経つほどに複利の方が資産の増加度合いが大きくなっていことが分かります。

先ほどの説明では、単利(①)と複利(②)を、それぞれ簡単な文章で表現しました。
その文章を以下のように数式へ変換すれば、両者の違いがより分かりやすくなります。

単利はイメージしやすいですが、複利は乗数が入っている分、まだちょっとイメージしにくいかもしれません。

ただし、やっていることと言えば、今回の例では105%(つまり1.05)を繰り返し掛け算するだけの単純作業です。
電卓やパソコン・スマホを使えば、それほど複雑な計算ではないでしょう。

さらに、①式と②式を眺めながら比べてみると、複利とは「毎年元金が増えていく仕組み」と言い換えられることにも気付きます。
もしかしたら、こちらの表現の方がイメージを掴みやすいかもしれませんね。

複利は偉大なり

先ほど20年の運用を例にして、複利では時間経過によって資産の増加スピードが加速されることを確認しました。

つまり、時間をかけて複利効果を最大限に活用することが、資産運用の結果をより良いものにする重要な要素になります。
資産運用は長期継続することが大切な最大の理由は、この複利の力にあるわけです。

長期投資における複利の働きは、こちらの記事で幾つかシミュレーションをしているので、参考にして頂ければ嬉しいです。

最後に、複利の偉大さが良く分かる、JPモルガン・アセット・マネジメントによる興味深いグラフをご紹介します。
1980年1月1日に、米国S&P500へ10万米ドルを投資した場合の、2024年3月末時点における累積価格リターンです。

ここでは、全期間を通して投資を継続した場合と、ある特定期間のみ投資を止めていた場合(上昇率の上位○○日を逃した場合)を比較しています。

一番左の深緑色の棒が全期間投資を継続した場合で、元金10万米ドルが約487万米ドルに、43年間で50倍近く成長しています。

そこから右へ目を移して、上昇率の上位1日・5日・10日・15日を逃した場合を見ていくと、灰色の棒で示された累積価格リターンは、それぞれ順に、約436万米ドル・約302万米ドル・約218万米ドル・約163万米ドルと、だんだん減少していきます。

そして、このグラフで最も注目すべきは、灰色の上にある水色の棒です。
これは投資を止めていた場合に取り逃がした複利分のリターンを示しており、徐々に増加していることが分かります。
例えば上昇率の上位10日を逃がしてしまうと、投資を継続した場合と比べて約261万米ドルもの複利効果を得られなかったことになります(…もったいない)。

このように43年のうち「たった数日だけ」複利の力を活かせなかったとしても、運用結果は劇的に変わって(悪化して)しまいます
長期で考えれば、それだけ複利効果は大きいため、取引タイミングを計って売買するより、稲妻の輝く瞬間に投資していることが大切というわけです。

資産運用では、たとえ悪い相場に直面しても「当初目標を忘れず」「複利の偉大な力を信じ」「どっしり構えて長期投資を継続」することが、より良い結果を生む最適解と言えますね。