長田FPオフィス

お金と正しく付き合うブログ

預金で資産は守れるか?

お金を貯めるには「収入の一部を貯蓄に回して手を付けず取っておく」ことが、最もシンプルな方法です。代表的な手段には、銀行へお金を預ける預金(ゆうちょ銀行の場合は貯金)がありますね。

ここからは、銀行・ゆうちょ・JA等の普通預貯金をまとめて、「預金」とします。

取っておいたお金は、その人の資産と呼ばれるものの一種です。そのため、資産形成は預金することから始める、というのが一般的ではないでしょうか。

一方、資産を守る場合に、預金は有効な手段と言えるでしょうか?

つまり、「預金で形成した資産を、預金のままにしておいていいのか?」という質問です。
どうでしょう?

結論を言うと「経済状況と長期見通しによる」と身も蓋もないんですが、大事なことは、これをツカミにして、預金のリスクやお金の額面(書いてある数字)と本当の価値について、視野を広げて考えてみることなんです。
それでは、詳しくみていきましょう。

預金は金融商品

突然ですが、預金は金融商品の一種です。
いきなり言われてピンとこないかもしれませんが、預金することは金融商品へ投資することに他なりません。

「投資じゃなくて、お金を預けているだけだよ」と思われるかもしれませんが、預金とは「銀行にお金を貸して、引き出し時に元本の返却とともに利息を貰う」金融商品なので、預金口座に入金するというのは、預金という金融商品へ投資するということを言葉を換えた言い回しなんです。

預金のリスク

理屈は分かったけど、「預金する=投資する」は、やはり腑に落ちない、と思われるのではないでしょうか?

もしそうだとすれば、おそらく「預金は元本保証だから」という認識をお持ちではないでしょうか?
元本保証は損しないから投資ではない、という具合に。

もしそう考えているのならば、元本保証について、何が保証されているのかを正しく理解する必要があります。
預金において、保証される元本とは「お金の量として書かれている数字」です。つまり、100円を預金している場合は「100」という数字は保証されるので、知らないうちに99や1に書き換えられることはありません。

「元本保証で数字が保証されているなら、100円は100円のままなんだから、預金はリスクないよね?やっぱり投資ではない」というのは、あわてん坊です。たとえ数字が保証されたとしても、預金のリスクは排除できず、実は損することも得することもある、という事実を知っておいた方が良いです。

この損得勘定をする際は、判断する基準を、お金の「数字」ではなく「価値」で考えてみると分かりやすいので、さらに詳しく見ていきましょう。

なお、投資においてリスクとは「変動しやすさ」の度合いを指し、ボラティリティ(volatility)とも呼ばれます。
つまり、損だろうが得だろうが、現状からの変動が激しいか緩やかかで、リスクの高低を判断します。

お金の価値を知る

お金の価値は、物・サービスの価値と交換できる割合(交換レート)によって決まります。「なぜお金は大切なのか?」と、お金の本質を問われた場合、正にこれが答えになります。大切なものと交換できる価値があるから、お金は大切なんです。

つまり、お金の価値は絶対的なものではなく、交換相手との関係による相対的なものです。

一般的に、お金の価値の方が物・サービスの価値より高い場合をデフレ、低い場合をインフレと呼びます。
よく言う「インフレで物価が上がる」というのは、「お金の価値が物の価値より低くなった結果、物の値段が上がる」という状態のことです。

元本保証というのは、預金しているお金の「数字」を保証するものですが、「価値」は保証されません。つまり、元本として書かれている数字に変化が無ければ、経済がデフレの場合は(お金の価値が高くなるから)得する一方、インフレの場合は(お金の価値が低くなるから)損することになります。

日本経済がこの先ずっとデフレのままなら、元本保証されていればお金の価値が低くならないので安心できますが、インフレになるようならお金の価値が低くなるため、結果として資産の価値が減る(=損する)という危険があります。

経済状態の変化:インフレとデフレは繰り返す

どの国の歴史を振り返っても、国が滅びて無くならない限り経済状態はインフレとデフレを交互に繰り返します。
以下のグラフが示す通り、世界経済を100年レベルの長期でみると、それを繰り返しつつも、インフレ傾向が進んでいます。

そのため、日本は長いデフレが続いているものの、いずれインフレにシフトする、と考えるのが自然です。
その兆候は2023年12月時点でも現れていて、日本の消費者物価指数は近年では高い状態にあり、いよいよデフレから脱却できるかもしれない、という期待が醸成されています。
日常生活の中で様々な物の値段が高くなっていることを実感すると、近い将来インフレになることが想像しやすいですね。

行動経済学によると、人間は、得するよりも損する方が感情の起伏が大きいそうです。
インフレになった場合を想像してみると、物価が上がっても資産が増えないとすれば、なんだか損していると感じませんか?すると、たとえ元本保証であっても預金にはリスクがあることを、身近なこととして理解しやすいと思います。

どの様な経済状態になろうとも、「預金することは、投資すること」という正しい認識を持って、自身に合ったリスク管理が、資産を守るためには大切だと言えるでしょう。