今から20~30年前、私が学生だった頃は「人生80年」と言われていました。
それが最近では「人生100年」と言われています。知らないうちに20年も延びていました。
良い悪いは別にしても、短期間でこれほどの延びは「本当かよ?」と疑うレベルで、驚異的ですよね。
いったい誰が言い始めて、我々にどう影響するのか、世の中の流れとともに人生設計の見直しについても、簡単にみていきましょう。
きっかけは一冊の本
世界的に人生100年と言われ始めたのは、2016年発売の『LIFE SHIFT(ライフ シフト)100年時代の人生戦略』(リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット著、東洋経済新報社)が、きっかけです。
私もこの本を読みましたが、かなりのインパクトを受けて、いろいろ考えさせられました。未読の方は、目次だけ見ても「なんだこれは?」と興味を持たれると思います。
詳細は本を読んでのお楽しみですが、これからの世界的潮流としてヒトの寿命が長くなっていくこと(健康寿命も延びる)、そして長くなった人生をどう生きるか(隠居生活だけじゃ退屈)、という話がザックリした内容です。
人類が経験したことのない長寿社会に向けて、国や企業など組織における制度だけでなく、個人の生き方にも前例の無い変革=チャレンジが必要になることが、分かりやすい例を挙げて述べられています。
日本での反響
この本は世界的なベストセラーとして様々な国の広い層の方に読まれていますが、日本でも大きな注目を集めています。
日本は世界一の長寿国家ということもあり、筆者の「2007年に日本で生まれた人の50%は、107歳まで生きる」という主張は、私たちにとってこの本をより興味深いものにしていると思います。
こうした状況を背景として、2017年当時の政府は「人生100年時代構想推進室」を内閣官房に設置し、少子高齢化社会における重要課題と位置づけ、政府として積極的に対策を進める流れが生まれました(ただし、政権交代後2021年に廃止されました)。
個人だけでなく政府にも影響が波及しています。このことから、我が国においても、100年生きることは多くの人にとって現実的になりつつあるようです。
人生設計の見直しは必要?(80年か 100年か、生きる長さの違い)
これまで考えられていた80年の人生では、大まかに分けると、生まれてから
教育20年 ➡ 労働40年 ➡ 余暇20年
で寿命を迎える、というのが一生を区切る目安でした。
これを100年の人生に当てはめてみましょう。
もし社会制度が大きく変わらず最初の60年が同じだとしたら、最後の余暇期間が2倍の40年に増加しますね。
遊んで暮らせる期間が倍になって嬉しい!…と言いたいところですが、単純に喜んでもいられません。というのも、寿命が延びた分だけ生活費が必要になる期間も延びるので、それをカバーできる労働収入が無いと、年金や老後資金の必要額が増加するからです。
そうなると「国の年金は大丈夫なの?老後に備えた資金はそんなに無いんだけど…」という不安がわいてきませんか?
引退後のお金を考える場合、これまでの私は、人生80年を前提にしていました。
なので、老後に備えた試算もそれに応じて済ませていました。
しかし、老後資金を人生80年で試算した額に据え置いたままでは、寿命が20年延びて人生100年で試算し直す場合、長生きした分だけ必要になる生活費は足りなくなります。
同じように試算されている方は、多いのではないでしょうか?
80歳を超えて生活費が足りなくなるなんて…そんな将来の自分を想像しただけで、背筋が凍ってきます。
そうなることは、絶対に避けたいですよね。
自分が何歳まで生きるか、これを正確に予測できる人はいません。
これまでは人生80年でした。そして、人生100年が現実味を帯びてきました。
先を予測することができないならば、100年生きても行き詰まらないように、それに備えておく方が賢明です。
つまり、労働収入がある現役のうちに、これまで描いていた人生設計を見直すべき、といえるでしょう。