前回は公的保険の概略を見てきました。
今回はそれをまとめたうえで、日本と欧米の資産構成を保険の観点から比較することで、民間保険へ話を進めます。
ただし、民間保険の商品性(仕組みや詳細)には一切触れず、もっと本質的なところだけに絞ります。
安心を得るためには、どれだけの民間保険が必要なのか?その前に、そもそも必要なのか?
不安を減らしつつ資産を増やしていくために、保険について考えていきましょう。
公的保険のまとめ
公的保険については、前回までに日本と諸外国の制度を簡単に比較しました。
整理すると、多くの方に最も身近な存在である公的医療保険は「皆保険」「少ない自己負担(原則3割)」「高い利便性」という三つが揃った日本の制度が優れています(日本の勝ち)。
一方、公的年金は所得代替率を比べるとどの国も同レベルで、老後の備えとしては不十分で優劣をつけ難いです(引き分け)。
同様に労働保険も各国の事情を反映して様々な制度になっているため、優劣の判断は難しいと言えます(引き分け)。
つまり総合的な判断として、優れた医療保険を有する日本の公的保険制度は、世界的に最も充実したセーフティネットである、と考えて良いでしょう。
家計の資産構成を改めて考える
さてここで、お馴染みのデータを引用します。
欧米と日本の資産配分を比較すると、公的保険以外の民間保険を表している「保険・年金」に差はありません。
つまり、公的保険制度(セーフティネット)が充実している日本と、それが日本に劣る欧米の間に差がないのです。
そもそも保険は、必要な保障に対して公的保険でカバーできない分がある場合に、それを民間保険で補う、ということが基本です。
この考えに基づけば、同レベルの保障を確保するのに必要な「保険・年金」の構成比率は、欧米に比べて日本の方が低くて良いはずです。
言い換えれば、日本人は「民間保険に入り過ぎ」ということです。
これは国民性の違いだけでなく、我々が保険の必要性を正しく理解できていないため過度に安心を求める、ということも要因だと思います。
例えば、学校や家庭で「なぜ必要なのか」詳しく教えて貰った記憶はあるでしょうか?
公的保険があるにもかかわらず、周りの大人から「何かあった時に備えて(民間)保険に入っておけ」と、おまじないの様に言われなかったでしょうか?
そして時が経ち、社会に出ても良く分からないまま「なんだか不安だけど、どうしよう…」となった結果、教えて貰ったおまじないを受け入れて「とにかく(民間)保険に入ろう」という流れで安心を買う。
まさに以前の私が、この流れに乗った一人でした。
同じような方はいらっしゃいませんか?
民間保険の必要性
というわけで、保険の必要性を理解するのはとても大切なのですが、これは意外とシンプルに考えることができます。
以下の①➡②のステップで進めるだけです。
①「日本には優れたセーフティネットがある」と認識する
②「自身にとってセーフティネットで不足する分がある場合、どう補うか」を考える
いつも引用している日米欧の比較データは、①の助けになるものです。
①ができれば②の難易度は低くなり、保険の必要性を考える際に「安心するために必要な分(公的保険で不足している分)だけ民間保険を利用しよう」という冷静な判断ができると思います。
これをお読み頂いているあなたが「日本の公的保険は結構イケている」という認識を得られて、それが無用な不安(と、必要以上な民間保険への加入)を減らすことに繋がるようならば、書き手としては嬉しい限りです。
保険のまとめ
人生には思いがけない出来事がたくさん起こります。
良いことは素直に喜んで受け入れればいいですし、少しくらい悪いことも何とか乗り切ることはできるはずです。
一方、生活を営めなくなるレベルの悪いことは、事前にそれを防ぐことができなければ、事後に補填する手段を備えておく必要があります。
その補填する手段が「保険」であり、繰り返しになりますが、公的制度で足りない分を民間制度で補う、という流れになります。
日本では公的保険が充実しているので、民間保険の多くは不要(入り過ぎ)なものだと考えられます。
もちろん個人差はありますが、なかには預貯金などの蓄えが十分あるので備えは万全(公的保険の不足分もカバーしている)、というような「民間保険は全くいらない」猛者もいらっしゃいます。
何となく不安だから、大人になって勧められたから、などの漠然とした理由で民間保険に加入してしまえば、不要な保険料を支払い続けることになります。
それだと保険会社は儲かりますが、家計の資産は増やせません。
自身が「どう生きたいか」というライフプランを明確にして、「備えが必要な悪いことが起きた場合」に公的保険で補填できない部分を試算しておけば、民間保険の必要性を見直せます。
どれだけ必要かが分かれば、足りていない分だけ残して、あとの不要になった分を別の資産形成に回せます。
そうすることで、将来に向けて資産も安心も増えるというポジティブなフィードバックが得られるはずです。
この機会に、今の自身の状況を再確認してみましょう。