前回見てきた様に、リタイアメント後のお金について不安が生じるのは、現役引退後に収支バランスがマイナスになる、つまりお金が不足する場合です。
今回は、この不安について深堀していくことで、不安を小さくするヒントを探してみましょう。
どこから収入を得るか?
リタイアメント後の収支バランスには、現役引退を機に収入源が変化することが、最も大きく影響してきます。
収入源は一般的には、
現役時:仕事 ➡ 引退後:年金・資産
言い換えると「労働収入」から「資産収入」へシフトしていきます。
つまり、リタイアメント後は「資産収入だけで生きていけるか?」という点が、不安になるかどうかを分ける重要な要素と言えます。
年金について
ここで言う年金は公的年金のことを指し、現役の間に年金保険料を支払って強制的に積み立てた資産とします。
年金は、特別な事情が無い場合、積立額・期間は自身で自由に決められません。
そのため、気付いたらいつの間にか資産が形成されている類の「ありがたい制度」なのです。
これはリタイアメント後に効いてきます。
そんなありがたい制度ですが、今の現役世代がリタイアメント世代になる頃には年金だけでは生活できないだろう、という見方が大勢を占めています。
こういう見方が広がった要因の一つとして、老後2000万円問題が挙げられます。
この問題における収入は「ほぼ年金」で試算されています。
つまり、リタイアメント後の収入源である「資産収入」のうち、平均的な日本人の資産は、ほぼ年金だけということを反映しています。
この条件で試算した結果が「お金が足りなくなる」というものなので、「年金だけでは生活できない」という見方になるわけです。
自主的な資産形成
様々な見解はあるものの老後2000年問題が提起されたのは、とても有益だったと言えます。
なぜなら「リタイアメント後の収入を年金だけに頼るのは、かなり分の悪いギャンブル」だということに、多くの方が気付けたからです。
とはいえ、年金以外に資産収入を得る方法を我々日本人は知りません。
多くの方が銀行預金という資産を取り崩すだけになってしまいます。
しかしながら、銀行預金は長期に渡って低金利だったため、運用益はほとんどありません。
つまり、資産から新たに生まれた収入を得るという観点では有効とは言えません。
資産を取り崩すだけではなく、そこからプラスアルファの収入を生み出すためには、ある程度の運用益を見込める資産を自主的に形成することが、とても重要になってきます。
そんな新たな収入を生む資産を形成するには、どうすればいいのでしょうか?
色々な考え方や手法があると思いますが、その一助として頂くために、伝統的な資産形成に関する過去実績のデータを2つ紹介します。
選択すべき資産の手掛かり
まず超長期のデータ、米国における過去200年の実績を見てみましょう。
これは、1802年以降の米国の株式・長期債・短期債の保有期間(1-30年)ごとの平均リターン(年率換算した複利利回り)で、インフレ調整後の実質利回りの最高値と最低値を示しています。
各棒グラフの長さは、その保有資産のリターンの変動幅を示しており、どの資産においても保有期間が長期になれば棒が短くなる=リターン変動幅が小さくなる(傾向①)、ということが分かります。
また、資産間の違いを比較すると、株式リターンのバラツキは、保有期間が短い内は債券より大きいものの、長期保有するほど小さくなり、10年超になると債券と大差なくなっています(傾向②)。
さらに、20年超になると、債券リターンはマイナスになることもありますが、株式リターンはマイナスになることはなく、常にプラスでした(傾向③)。
これらの結果から、投資期間を20年超とすれば、株式は債券より安全な投資先であり、インフレ(物価上昇)に負けないレベルの運用益を期待できる資産、ということが示唆されます。
次に直近のデータ、先進国株式と債券の実績を見てみましょう。
面白いことに、こちらも米国と同様の傾向①-③が見て取れます(傾向③については、債券もプラス)。
また特筆すべきなのは、どちらのデータにおいても、20年超リターンの最高値・最低値は、株式の方が債券より良いという結果でした。
これらは過去の実績なので、未来を予測するものではありません。
ただし、その点を踏まえても、先進国・米国の株式へ長期に分散して投資する資産形成は、リタイアメント後の収入源を築くうえでかなり有望な手段だと言えそうですね。