長田FPオフィス

お金と正しく付き合うブログ

35歳のファイナンシャルプランニング

今回はファイナンシャルプランニングの実践例として、35歳の男性に対してコンサルティングを行います。

前回は25歳の男性の事例を取り上げましたが、もし彼が35歳だとしたらどんな人生になるのでしょう?という内容です。

日本では男女ともに初婚年齢が高くなっている傾向にあります。
男性にとって35歳で結婚(お相手の女性は32歳)という設定は、今後ますます現実的なものになると思います。

というわけで早速、シミュレーションを見ていきましょう。

35歳のプロフィール

はじめにライフプランを確認しましょう。

35歳の彼は2024年(今年)に32歳の女性と結婚しました。
仕事は順調で、自らの担当業務だけでなく後輩への指導も任されており、多忙な日々を送っていますが、健康面で懸念はありません。
お金については、日常生活と休暇を楽しむ分の余裕はあるものの、現時点では貯蓄ゼロです。

彼のプロフィール・ライフイベントの詳細は以下になります。
その他の詳細条件は、前々回の最後にまとめましたので、そちらの「共通する基本条件」を開くとご覧頂けます。

35歳で結婚する男性の場合

職業:会社員(就職23歳、退職65歳)
年収:640万円(35歳時点)
退職金:2,000万円(65歳一括受取)
年金受給開始:65歳(年金変動あり)
家族:配偶者(現時点の年齢32歳)、子供2人(予定)
配偶者の職業:現在は会社員(年収500万円)で2024年末に退職(退職金200万円)

   ➡33歳から専業主婦
   ➡40歳からパート年収120万円(退職60歳、賞与・退職金無し)
住宅:結婚年に購入(4,500万円)
   ※諸経費込、100%世帯主名義
   ※親からの資金援助無し
   ※団体信用生命保険加入
   ※住宅ローン控除対象認定住宅
住宅ローン:フラット30

   ※元利均等年利2%固定
昇給率:2.5%(年率)
生活費変動率:2.0%(年率)

現実を知る

前回と同じく、現在の状態と、このままの現状を維持すると将来どうなるかを把握するために、お金の動きを具体化してみます。

今回の条件で作成したCF表を、以下のグラフにしました。
一つ目は収支バランス、二つ目は資産残高です。

一つ目のグラフを見ると、現役時代の単年収支は、第1子の大学入学に車購入や住宅修繕など特別支出が重なる55歳を除けば、基本的に問題なさそうです。

ところが、二つ目のグラフでは、その55歳時支出の影響が如実に見られます。
55歳から58歳までの4年間、金融資産残高がマイナスに転落しており、マズい状況です。

ただし、58歳までの4年間をやり繰りできれば、老後は問題なさそうです。
というわけで、将来の家計破綻を避けるには、この4年間の資産残高をプラスに維持することが課題だと判明しました。

改善対策を練る

この課題をクリアするための対策を考えていきますが、幸いにも今回のファイナンシャルプランニングは難しくありません。

以下の改善案のように毎月ほんの少し節約するだけで、当初のライフプランを変えることなく、資産残高プラスを維持できます

改善案

対策①生活費を4%(1万円/月)削減
   世帯主35歳23.8万円➡22.8万円

この効果を分析するために、現状を維持した場合(改善前)対策した場合(改善後)、それぞれの資産残高推移をグラフにしました。

改善前のグラフは、先ほどの二つ目のグラフと同じものです(資産残高のマイナス・プラスを色分けして、住宅ローン残高の情報を削除しました)。

課題としていた4年間がプラスに転じただけでなく、老後の資産残高にも厚みができので、効果は良好だと言えます。

生活費の削減は、多かれ少なかれストレスを伴うものです。
とはいえ、率にして4%程度の節約であれば、ハードルはそれほど高くないと思えます。
無理せず続けていける対策、と言って良いでしょう。

もう一つの改善対策

実は視点を変えてみると、面白い提案が生まれることがあります。

先ほどは自力で課題をクリアしましたが、世帯主の親から資金援助してもらえないでしょうか?
もし可能と言う場合は、それを改善案にしてみましょう。

具体的には、暦年贈与という仕組みを利用して、世代間で資金を移動するというものです。
これは相続対策として親子両世代のメリットとなる方法ですが、ここではそこまで深く考えることはしません。
今回は、例として「かわいい初孫が誕生したご祝儀」という、親から子への贈与をイメージしましょう。

暦年贈与を利用した対策では、ご祝儀の金額が贈与税の基礎控除を越えないように、数年に分けて祝って(贈与して)もらうことになります。
すると、以下のような改善案を作ることができます。

改善案(親に援助してもらう)

対策②親から暦年贈与を受ける
   贈与税の基礎控除の110万円/年
   世帯主35~37歳の累計330万円


この結果を反映した資産残高推移のグラフは、以下のようになります。
課題としていた4年間に加え、老後も安心して暮らせることが分かりますね。

こうした親の援助を活用する場合において、自力で改善する場合との大きな違い=メリットは「生活費を削減する必要がない」という点です。
つまり、現状から何も変えなくて良い「ノーストレス」な対策というわけです。

親が喜んでご祝儀を渡してくれることが前提とはいえ、ご家庭によっては現実味のある話と言っていいでしょう。

このように、核家族的な視点に留まらず、世代を越えた家族的な視点へシフトするだけで、課題に対する視野を広げられ、新たなファイナンシャルプランニングが生まれることがあります。

実現可能な選択肢をいくつか用意できれば、心に余裕が生まれて、改善案を行動に移すのもスムーズになるはずです。
どんな内容の改善案が自分にとってしっくりくるのか、FPのコンサルティングを上手に活用することで最適解を見つけましょう。