長田FPオフィス

お金と正しく付き合うブログ

25歳のファイナンシャルプランニング

FPのコンサルティングでは、ライフプランとCF表を作成・分析して、将来を見通した収支バランスや資産形成の計画を立てるファイナンシャルプランニングを行います。
その計画に基づいてお金をコントロールしていくことで、ライフプランの実現を目指すわけです。

例えば、社会に出て数年の若者が家庭を持つことをイメージしてみましょう。

彼は25歳の男性で、2024年(今年)に22歳の女性と結婚しました。
彼には充実した体力と若さがあり、健康面の不安はありません。
会社員として、そろそろ仕事にも慣れてきました。

一方、資産はまだ少なく金銭面では心もとない状態にあるため、大切な人を養っていくのは容易ではありません。
やがて子供が生まれ、その子の成長を見守る幸せな毎日が待っていますが、職場では仕事の負担や責任が増えて多忙になっていき、家庭では生活費や教育費、住宅ローンなど日々のやり繰りに追われることになります。

この状況でさらに、自身の老後を考えて今から備えておく、という余裕は無さそうに思えます。
そんな彼がFPに家計相談してみたら、どうなるでしょうか?

今回から数回に渡って、そのシミュレーション結果をご紹介します。
まずは、前回ご案内した結婚年齢を変化させるパターンの中で最も若い、25歳の場合を見ていきましょう。

25歳のプロフィール

はじめにライフプランを確認しましょう。

主なプロフィールとライフイベントは以下になりますが、その他の詳細条件は前回の最後にまとめていますので、もし気になったら「共通する基本条件」を開いてご覧ください。

25歳で結婚する男性の場合

職業:会社員(就職23歳、退職65歳)
年収:500万円(25歳時点)
退職金:2,000万円(65歳で一括受取)
年金受給開始:65歳(年金変動あり)
家族:配偶者(現時点の年齢22歳)、子供2人(予定)

配偶者の職業:現在は専業主婦
   ➡30歳からパート年収120万円(退職60歳、賞与・退職金無し)
住宅:結婚年に購入(4,500万円)
   ※諸経費込、100%世帯主名義
   ※親からの資金援助1,000万円
   ※団体信用生命保険加入
   ※住宅ローン控除対象認定住宅
住宅ローン:フラット35

   ※元利均等年利2%固定
昇給率:2.5%(年率)
生活費変動率:2.0%(年率)

現実を知る

ファイナンシャルプランニングの第一歩として、現在の状態と、このままの現状を維持すると将来どうなるか、それぞれを把握するために、お金の動きを具体化してみます。

まず毎年の収支と資産残高を計算して、年齢ごとに時系列でCF表を作成します。
さらに、CF表の数値推移を分かりやすくするために、グラフを利用して視覚化します。

今回の彼の場合は、以下のようなグラフが描けます。
一つ目のグラフは収支バランスを、二つ目は資産残高を、それぞれ表しています。

一つ目のグラフに表れている単年の収支変動は、20~40歳代ではさほど大きくないようです。

一方、二つ目のグラフを見ると老後は問題なさそうですが、25歳で結婚後に住宅を購入して子供が生まれ成長していく過程では、長期に渡り(52歳まで)金融資産残高のマイナスが続き、家計が破綻している状態であることが分かります。

ある年齢における資産残高は、その年齢まで毎年の収支を累積した結果です。
つまり、40歳代まで単年の赤字は小さく見えていても、それを足し合わせていくことで累計額が多くなれば、資産残高のマイナスはどんどん膨らんでしまいます
二つ目のグラフは、このことを視覚化しているわけです。

一つ目のグラフだけだと「年間収支が赤字になる年は多いけど、どの年も赤字額は小さいし、黒字になる年もあるから大丈夫」という誤った認識に陥る懸念があります。
それが、二つ目のグラフと合わせて見ることで「今のままでは一家の生活を続けられない」という危険な状況が明らかになります。

こうして現実を知ることにより、将来家計が破綻しないよう何かしら対策を考えるための準備が整いました。

改善対策を練る

CF表をグラフ化して見えてきた現実は愕然とするものでしたが、幸いまだ結婚したばかりの25歳です。
家計改善の道を歩むのは、今からでも全く遅くはありません。

というわけ、その対策を練りましょう。

彼にとって何よりも優先すべきは「どの年齢においても金融資産残高プラスを維持する」ことなので、今回のファイナンシャルプランニングでは、それを家計改善のゴールとします。
つまり、52歳までの全年齢におけるマイナス解消と、それ以降のプラス維持を目指します。

52歳までの単年収支に目を向けると、現状のライフプランでは、子供が生まれて間もなくは世帯主の一馬力で赤字、第2子が保育園に入って配偶者がパートを始めてしばらくは黒字、子供が大きくなるに連れて再び赤字、第1子が就職する49歳からは黒字です。

黒字の年もあれば、赤字の年もありますね。
ライフイベントに応じて支出が増える年もあり、全年齢で黒字を達成するのは難しいものの、そのような年を除けば、毎年固定の支出を抑えることで、赤字になる額と年数を減らすことができるかもしれません。

また、結婚1年目(25歳)に赤字スタートし、資産残高がマイナスのままになっています。
せめて黒字スタートでプラスを維持できるよう頑張りたいので、1年目だけでも収入を増やせないでしょうか?

このように個別に対策を挙げていき、改善案としてまとめて書き出した結果、今回は以下のようになりました。

改善案

対策①生活費を12%(2.5万円/月)削減
   世帯主25歳21.2万円➡18.7万円

対策②結婚1年目に配偶者が働く
   配偶者22歳無収入➡年収120万円
   ※パート(賞与・退職金無し)

対策③生命保険の加入年齢を5年先送り
   世帯主25歳➡30歳

   配偶者22歳➡27歳

これをCF表に反映させて、その数値を確認することで、対策による効果を分析します。

要はどれだけ改善されているかを見ることになりますが、そのために、現状を維持した場合(改善前)対策した場合(改善後)、それぞれの資産残高推移を可視化したものが以下のグラフになります。

改善前のグラフは、先ほどの二つ目のグラフと同じものです(資産残高のマイナス・プラスを色分けして、住宅ローン残高の情報を削除しました)。

このグラフを比較すると、改善前は52歳までマイナスだった資産残高が、改善後どの年齢でもプラスになっていることが、一目瞭然ですね。

こうして無事にファイナンシャルプランニングのゴールに到達できました。
あとはコンサルティング結果を実現するために、行動あるのみです。

なお、ここでは細部に触れませんでしたが、生活費を1割削るための項目選定(固定費の見直し)や、配偶者が出産前に働く妥当性(本人の意思や求人状況)は、いずれも実現可能なものでなければ意味がありません
そのため実際にFPが行うコンサルティングは、現実に沿ってあらゆる要素を考慮した内容になります。

今回は比較的若い25歳という年齢でシミュレーションしました。
何となく想像できていたかもしれませんが、若い間の生活は節約重視でありつつも、現役の内に子供が独立するため、早い段階で収支バランスが改善していき、どうやら老後の備えは心配しなくて良さそう、という結果でした。

次回は彼が35歳で家庭を築いたらどうなるのか、同様にシミュレーションしていきます。
25歳とは違った風景が見えるはずなので、どうぞお楽しみに。