これまで複数回の記事(資産運用のお手本:日本の年金基金GPIF① 、②、③)に渡って、日本の公的年金基金「GPIF」のことを紹介しました。
特に、「私たち個人の資産運用において、GPIFの運用スタイルは参考になるのか?」という観点から、その実用性について見てきましたね。
普段はあまり身近に感じることのない年金基金ですが、見方を変えると、なんだか興味深いものになったはずです。
今回はGPIFの総まとめとして、最新の運用状況を確認したうえで、最後に「個人はどう行動したら良いのか?」私なりの考えをお伝えしたいと思います。
2023年12月末の運用実績
それでは、最新状況を見ていきましょう。
GPIFのウェブサイトから、それを確認することができます。
現時点(2024年5月10日)では、2023年度第3四半期の運用実績が公開されていますので、それぞれ以下に引用します。
表の右側にある市場運用開始以降を下から上へ見ていくと、運用資産額は224兆7,025億円(2023年3月末時点200兆1,328億円)、累積収益額は132兆4,113億円(同108兆3,824億円)となっています。
これは収益率が3.99%(同3.59%)まで順調に伸びてきた結果です。
さらに資産額の動きを視覚的に捉えるため、次のグラフに目を向けましょう。
運用を開始した2001年度からの累積収益の推移は、単独四半期では上げ下げの細かい変動が見られるものの、長期では右肩上がりのトレンドで増えていることが分かります。
まさに絵に描いたような、長期運用で資産が形成される成功例だと言えます。
マネするための情報整理
前々回と前回で確認したように、GPIFの運用は手堅く保守的な「成功した資産家が辿り着く最も安定した王道スタイル」なので、「投資は怖い」「元本保証は必須」という人が資産形成をはじめる際にも適しています。
それは、伝統的な4資産(国内株式、外国株式、国内債券、外国債券)を均等に保有し、長期運用するというものでしたね。
ここでは、GPIFの最新状況と照らし合わせて、個人がマネできる方法を再確認しましょう。
以下のグラフは、先ほどの運用状況を4資産に分解したものです。
どの資産も、2022年度(2023年3月末)の実績より増加しています。
ただし、増え方は資産ごとに異なるので、この時点で基本ポートフォリオの構成割合にズレが生じています。
そのためGPIFとしては、それぞれの資産価額が均等になるように、リバランス(売買して各25%の割合に戻す)を行うことになります。
前回の復習になりますが、私たちがGPIFをマネするために取引するのは、各資産を構成する個別の銘柄ではなく、次に挙げるベンチマークに連動する投資信託やETF(上場投資信託)です。
ベンチマークの資産と、実際に市場で取引できる金融商品には、細かい違いもありますが、それさえ気にしなければ簡単に4資産を均等保有できます。
そして、年1回程度のリバランスをするだけであれば、大した負担にはならないはずなので、個人でも難なく長期運用を続けていけるというわけです。
まとめ
公的年金基金の話は、どこか遠い世界の他人事ではありません。
それどころか、日本のGPIFは、私たちの将来の年金に関係しているだけでなく、その運用をマネすることで資産形成にも活用できる、とても身近なものだと言えます。
特に、「裕福な資産家」「これまで投資をしたことがない人」「リスク許容度が高くない人」、そういった人にとっては、おススメできる運用スタイルです。
この先「自分ならどうするか?」を考えるとき、GPIFはきっと良いお手本になるでしょう。
とは言うものの、実のところ現在の私は、ここで挙げたどの人にも該当しないので、資産を形成するための投資として、GPIFの運用スタイルは採用していません。
正確には債券に投資していないだけで、国内外の株式を長期運用している点は同じですが、私の場合はGPIFとは異なる目標があるため、中身や構成割合は自分でアレンジしています。
このように資産運用においては、優れた実績を残している運用スタイルを参考にしつつも、あくまで自身に合う方法で続けていくことが大切です。
間違っても「投資に詳しい人や成功している機関投資家が推奨しているから、良いものだ」などと無条件に信じないようにして頂きたいです。
資産は長い時間を掛けて運用することによって形成されるものなので、それを途中で止めてしまっては意味がありません。
そうであるがゆえに、私たち個人は自身が継続できる運用スタイルを選択すべきなんです。
投資に限ったことではありませんが、結局は「目的を明確にして」「使う道具を理解して」「自ら納得して」そのうえで「行動に移す」ことが大切、これに尽きるというわけですね。