私たちは日常会話の中で、「景気良さそうだね」とか「ここのところ景気悪くて大変」とか、景気という言葉を何気なく使っています。
会話を円滑に進めるツカミとして、天気の話題と同じくらい便利なものですよね。
一方、景気とは一般に、個人の懐具合ではなく、社会経済の状況や動向を意味します。
そんな景気の良し悪しの判断は、国や時代によって基準は異なるものの、通常は公的統計の調査結果を指標とした全般的な分析によって、結論が導き出されます。
そうやって得られた景気動向に関する情報は、様々な政策の検討や行政判断に活用される、とても重要なものになります。
…などと言われたら、景気の話って「面倒くさそう」と、イヤになっちゃいませんか?
でも、毛嫌いする前に聞いてください。
結局のところ、景気というのは世の中の雰囲気のことなので、私たち一般の生活者が難しい方程式や数字を覚える必要はありません。
むしろ専門機関から発表される情報を見て「まあ、そんなもんか」と、定期的に状況を把握するくらいがちょうど良いんです。
景気については、杓子定規に数字を見るのではなく、雰囲気の裏付けとして数字があることを知っておくだけで十分です。
というわけで今回は、「いま景気ってどうなの?」を大まかに掴む指標である景気動向指数について、分かりやすくお伝えしたいと思います。
景気動向指数とは?
景気動向指数は、日本において景気判断に用いられる指数です。
小難しい名前ですが、要は景気の良し悪しをなるべく客観的に判断しよう(何となくとか、誰か偉い人の気分ではなく数値基準を設定)、という使命を帯びて生まれた指数なんです。
さらに景気動向指数には、現状を知るだけでなく将来を予測することも期待されています。
…未来のことまで知ろうとするなんて、ちょっと荷が重い役割ですよね。
いずれにせよ、景気動向指数は鮮度の高さが求められるため、様々な情報源からタイムリーに出てくる各種経済データを基にして、内閣府より毎月公表されています。
こうした特徴を持つ景気動向指数ですが、具体的には次の2つのことを指します。
景気変動の大きさやテンポ(量感)を測定:CI(コンポジット・インデックス)
景気の各経済部門への波及の度合いを測定:DI(ディフュージョン・インデックス)
これらを常時覚えておく必要はありませんが、ここからの話に出てくるので、ちょっとだけ記憶に留めて頂きたいです。
時系列で分類する
景気動向指数であるCIとDIは、30種の共通指標を採用して算出されます。
それぞれ景気に対して、先に動く指標の先行系列(11種)、ほぼ一致して動く指標の一致系列(10種)、遅れて動く指標の遅行系列(9種)、という3系列の分類があり、以下の指標が採用されています。
このうち、CI一致指数が上昇だと景気拡張、下降だと景気後退とみなされますが、それらが極めて短期間の場合は、当てはまらないことがあります。
そのため景気転換点を見極めるには、CI一致指数のトレンドを確認した方が良いと言われています。
また、DI一致指数は、景気拡張局面では50%を上回り、景気後退局面では50%を下回ることが多いです。
…と、なんだか話が込み入ってきたので、これ以上突っ込むのは一般向けではないですね。
さらに個別詳細を知りたい人がいらっしゃるなら、内閣府ウェブサイトの手引きを参照頂きたいと思います。
いずれにしても、CIやDIを基にして「今の景気がどうなのか?」判断することは可能です。
とはいえ、個人で毎月そんな面倒な分析をしなくても、内閣府ウェブサイトにある結果で「一致指数の基調判断」(CI一致指数)を確認すれば、景気動向を知ることができます。
この情報はすぐ見つけられるので、一度覗いてみると面白いかもしれません。
景気の良し悪しを知るには?
このように景気を判断する際は、基本的にCI一致指数を参照します。
ただ気を付けたいのは、CI算出に用いる統計データは、計算時点では過去のものだという点です。
例え先行系列であっても、あくまで過去の時点から見た値、であることに注意が必要です。
私たちは、景気が「いつ上向くか?」「いつ悪化するか?」といった転換期を景気動向指数によって知りたいわけですが、統計データの取得と計算の間には、どうしても時間的なズレが生じます。
そのため、どれだけ良く分析された景気動向指数であっても、それだけで未来予測するのは結構難しいです。
なお、公的機関以外にも、景気動向について独自見解を公表している民間団体はあります。
そのうち日本経済研究センターではCI先行指数を利用して「景気後退確率」を毎月算出していますが、実際の景気後退期と景気後退確率を並べてみれば、未来予測の難しさがお分かり頂けると思います。
公的統計を基に算出された景気動向指数は、とても頼りになる情報ですが、前述したように景気の本質は、あくまで雰囲気です。
また、幸いなことに私たちは、ある時は消費者だったり、別のある時は労働者だったりと、経済活動において様々な顔を持ち合わせている社会の一員です。
そのため世の中の景気を掴むには、日々の生活で感じられる自らの肌感覚を信じたうえで、それを補完する情報として景気動向指数を参照するのが最適だと言えるでしょう。
気軽に使える便利なツールとして、景気動向指数を上手に活用していきたいですね。