長田FPオフィス

お金と正しく付き合うブログ

私的年金をご存じですか?

私たちの暮らす日本には、充実した公的年金の制度が存在しています。

…このように言い切ってしまうと、「年金なんか当てにならない」「払った分は返ってこない」「そもそも貰えるわけがない」、という様々な反論が飛んできそうです。

確かに、お気持ちは分からないでもないです。
でも、そうした反論には、感情論的なところが多分にあるので(真っ向から否定すると思わぬケガをしてしまい危ないんですが)、やんわりお応えすれば、「公的年金だけに頼りっきりだと、老後は厳しくなるだろうけど、それでも生活費の柱になることは間違いないですよ」、というのが正しい認識だと思います。

必要以上に不安を感じなくてOK、ということなんです。

ただし、それだけに頼りっきりでは、日々節約に節約を重ねても、なお生活は苦しいまま、という懸念は払拭できません。
将来の自分のために、今から自分自身で備えておくことは、とても重要であることに変わりないでしょう。

そこで今回は、私たち個人や、勤務する企業で備えることができる「私的年金」について、その制度の概要を簡単にご紹介したいと思います。

日本の年金制度

日本の年金は、大きく分けて二つの制度で成り立っています。
一つは公的年金で、もう一つは私的年金です。

公的年金については、こちらの記事で、(かなりザックリですが)概要を説明しています。
基本的に皆保険(全員加入)であり、全国民対象の国民年金保険(1階部分)と、会社員等が対象の厚生年金保険(2階部分)が存在します。

これに個人で任意加入できる私的年金(3階部分)を合わせて、全体で3階建て構成になっているわけです。

このうち、今回は私的年金の中身を見ていきましょう。

まず、厚生労働省のウェブサイトに、その概要と、詳細が、それぞれ掲載されています。
…といっても、これらのサイトは年金に「相当興味のある人」しか訪問しないと思うので、ちょっとだけ簡単に解説しますね。

日本における主な私的年金は、確定給付型年金確定拠出型年金国民年金基金厚生年金基金、これら4つになります。

このうち国民年金基金は、自営業者など国民年金の第1号被保険者が任意加入できる制度で、地域型の全国国民年金基金と、職種別に設立された3つの職能型国民年金基金があります。
ここでは詳細に触れませんので、興味のある人は、厚労省サイトを覗いてくださいね。

また、厚生年金基金は、企業が厚生年金の一部を代行して給付するもので、企業によっては独自の上乗せができる制度です。
ただし、法改正によって現在では厚生年金基金の新設は認められておらず、既存の基金でもそれを維持する負担が大きいことから廃止する企業が多いため、今となっては希少度の高い「お宝制度」と化しています。
このように、残念ながらほとんどの人は対象にならないので、厚生年金基金には、これ以上は触れません。

なお、これら4つ以外にも、中小企業退職金共済(企業年金)や、小規模企業共済(個人年金)などの私的年金制度はありますが、話が込み入ってしまうので、ここでは割愛することにします。

確定するのは拠出か?給付か?

というわけで、主要な4つのうち、ここからは確定型の2つの年金「確定給付型」と「確定拠出型」にフォーカスしていきます。

まず、「確定って何なの?」という素朴な疑問が湧いてきませんか?
その答えを理解するには、言葉よりも先に、こちらのグラフを見て頂く方が分かりやすいと思います。

2つのグラフのうち、上は確定給付型、下が確定拠出型の説明です。

グラフにあるように、確定するのは「給付」か「拠出」、そのどちらかになります。
文字にするとたったこれだけの違いです。

でも、意外と重要な特徴の差があるので、それを個別に確認してみましょう。

確定給付型企業年金(DB)

まず、確定給付年金についてです。

こちらは、給付が確定している企業年金で、正確には確定給付企業年金制度、それを英語にしてDB(Defined Benefit)という略称で呼ばれることもあります(以下、DBに統一します)。

一般的にDBは、年金というよりも退職金制度としての色合いが強く、退職金を一括支給か、分割して年金として支給か、という選択肢を提供してくれます。

年金の原資は、個人ではなく企業によって拠出され、「給付時の受給権が保護されている」というのが長所です。
また、その制度や拠出額は労使で設定できるという柔軟性もあります。

DBには「規約型」と「基金型」の2種類があります。

規約型は、労使で合意した年金規約に基づき、母体とする企業外の信託会社・生命保険会社などが、契約によって年金資金の管理・運用・給付を行うものです。

基金型は、母体とする企業が設立した企業年金基金が、年金資金の管理・運用・給付を行うものです。

いずれにしても、個人ではなく企業が主体となっているため、加入者が離職・転職したり、企業側の年金・退職金制度などが変更された際は、それまでに積み立てていた年金資産を、他の年金制度へ移せる場合があります(資産を「持ち運ぶ」という意味で、ポータビリティと呼ばれます)。

DBは、あまり身近に感じることがないため、理解するのは複雑(かつ、ツマラナイ)ので、さらに詳細が知りたい人は、厚労省サイトでご確認ください。

確定拠出年金(DC)

続いて、確定拠出年金について、見ていきましょう。

拠出が確定している年金で、英語では、DC(Defined Contribution)という略称で呼ばれます(以下、DCに統一します)。

この制度で拠出される掛金は、一律ではなく加入者ごとに区分されます。
拠出金を基に加入者自ら運用して、その損益を合わせた資産が、給付の原資となります。

このように加入者自身で運用できるので、自分年金としての自由度が高く、また確定給付型を採用するのが困難な企業側の負担を低減できるため、DCの活用は徐々に拡大しています。

DCには「企業型」と「個人型」の2種類があります。

企業型は、その名の通り企業からの拠出によるものです。
企業の拠出に加え、一定範囲内であれば、加入者個人の拠出も可能です(マッチング拠出)。

一方の個人型は、いわゆる「iDeCo」として広く知られています。
iDeCoは、個人の拠出によるもので、希望者の申請により加入できます。
なお、ポータビリティがある点はDBと同じですが、DCには拠出限度額が設定されています。

iDeCoについて、現在(2024年10月1日時点)の加入資格などをまとめたものが、以下になります。

この表は少しごちゃごちゃして見づらいので、現時点のものだけを引用しましたが、実は、もうすぐ拠出限度額が改定され、表中の数字も変わるんです。

具体的には、2024年12月1日以降の拠出分から、改定が反映されます(参考:確定拠出年金制度の拠出限度額)。

この変更点も含めて、次回はDCについて、より詳しく見ていきたいと思います。