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お金と正しく付き合うブログ

火災保険のキホン①

保険という言葉から真っ先に連想されるのは、多くの人にとって生命保険、特に死亡保障について契約する終身保険や定期保険ではないでしょうか。
死亡という「最も起こって欲しくない事象」に対して、「保険」で備えたいというのは自然な感情だと思います。

そんな生命保険の陰に隠れがちなんですが、「不測の事態に備える」保険本来の必要性という観点からすると、もっと重要なものがあります。
それは、損害保険です。

なぜなら、生命保険の保障というのは、実は公的保険でカバーされる部分があるんですが、損害保険の補償、特に火災については、公的保険でカバーされない「素っ裸」な状態だからなんです。

というわけで、今回は損害保険のうち、火災保険について、その概要と一般的な補償内容を見ていきましょう。

損害保険について

はじめに、損害保険とはどんなものか、簡単に紹介します。

まず、民間の保険(公的保険以外の私的保険)について、ちょっと説明したいと思います。
日本では保険業法という法律のもと、以下のように3つの分野の保険が存在します。

保険の3分野

第1分野:生命保険
第2分野:損害保険
第3分野:その他(医療保険、介護保険など)

このうち第2分野の損害保険は、自動車保険や火災保険、地震保険といった「偶然の事故」に備えるための保険になります。

保険金の給付については、一般的に生命保険は定額(契約時に金額が定まっている)、一方で損害保険は実損額(契約時に金額が定まっていない)、と異なる形態になっています。
つまり損害保険の場合、実損額以上の保険金を貰う、いわゆる保険太り(保険事故によって利益を得ること)はできないことを意味します。

もし保険太りを狙って、故意に事故を起こしたり、損害について虚偽報告をしたりすると、法的に罰せられるだけでなく損害を補填することもできなくなりますので、くれぐれも変な気を起こさないようにしましょう(…普通しませんよね)。

なお、一つの保険会社で生命保険と損害保険を兼業することはできませんが、その子会社であれば各々の保険業に参入可能となっています。
そのため、生保会社のグループ企業なのに損害保険の取り扱いがあったり、その逆もあったりと、私たち消費者から見れば、なんだか入り組んで分かりづらい状態になっているのが、保険業界の実情です。

火災保険の概要

火災保険は、その名の通り火災による損害を補償する保険ですが、実は火災以外にも広範囲の損害をカバーしています(後述)。

火災保険の対象となるのは、以下の5つに分類されますが、このうち一般的には建物と家財がメインになります。

保険の対象

建物
・家財
・屋外設備、装置
・設備、什器備品など
・商品、製品など

建物は、その目的(住宅、店舗など)や、構造(木造、コンクリート造など)により、火災リスクが異なるため、条件に応じて保険料が異なります。

家財は、建物内に収容されているものが対象ですが、1個または1組の価額が30万円を超える貴金属・美術品などは、保険証券に明記しなければ対象にならないため、注意が必要です(これらを「明記物件」と呼びます)。

火災保険の契約では、対象とする建物や家財などの評価額を基に、損害を補償する保険金額を決定します。
この評価額には、再調達価額時価額の2つがあります。

再調達価額とは、保険対象と同等のものを新たに建築・再購入するために必要な金額です。
そのため、再調達の際の物価に応じて、評価額が上下する場合があります。

時価額というのは、再調達価額から、経過年数や使用による消耗分(減価分)を差し引いた金額になります。

例えば住宅など、すぐに再建を要するものは、時価額を基に保険金額を設定してしまうと、保険金額だけでは再建できない(資金が不足する)懸念が残ります。
こうしたことから、損害に対する再建資金を保険金で補填できるように、再調達価額で評価して保険金額を設定することが、一般的になっています。

再調達価額の計算は、以下の2つの計算式があります。

 ①年次別指数法(再取得価額法)
  再調達価額 = 建築価額 × 建築費倍率(価格変動率)
  ※新築でない場合、その建物を新築した建物価額が分かっていれば、
   新築時点から評価時点までの建築費倍率(価格変動率)を乗じる

 ②新築費単価法(概観法)
  再調達価額 = 新築費単価 × 延床面積
  ※新築した年や当時の建築価額が分からない場合、建物に使われている
   材料などで定められた「1m2当たりの標準的な単価」(新築費単価)に、
   建物の延床面積を乗じる

時価額の計算は、以下の計算式になります。
  時価額 = 再調達価額 - 経年減価額

火災保険の補償

火災保険がカバーする損害は、火災以外にも広い範囲に及びます。

一般的な火災保険には、基本的な補償が定められている住宅火災保険(普通火災保険)と、より広範囲の損害に備えられる住宅総合保険(店舗総合保険)があります。

それぞれの補償内容は、以下の通りです。

補償の内容

住宅火災保険(普通火災保険)

火災、落雷、破裂・爆発、風災・雹災・雪災

住宅総合保険(店舗総合保険)

火災、落雷、破裂・爆発、風災・雹災・雪災
(上記に加えて)
外部からの物体の飛来・落下・衝突、給排水設備の事故等による水濡れ、
水災、盗難、騒じょう等による暴行・破壊

補償されるのは保険対象の損害を補償する「損害保険金」だけでなく、それに付随する費用(例:建物を修繕している期間に滞在するホテル宿泊代など)を補償する「費用保険金」というものもあります。
費用保険金が、損害保険に付随するか、特約になるか、予め確認しておくと良いでしょう。

さらに補償内容を拡充したい人は、個人賠償責任などの特約を付帯することも可能です。
ただし、地震や噴火(さらにこれらを起因とする津波)による火災などの損害については、火災保険の補償の範囲外です。

そのため、地震関連などの事象に備えるには、別途、地震保険への加入が必要となるので、この点は注意しておきたいですね(地震保険については、改めて解説しようと思います)。

というわけで、今回は火災保険の基本をお伝えしました。
次回は、火災保険のお金(保険料や保険金額)の仕組みについて、ご紹介します。