資産運用は長期で行うことが基本ですが、これは時間を味方につけることを意味します。
そこで今回は、長期で運用する際の一括投資と積立投資について、その特徴と有効性を詳しく見ていきましょう。
一括投資
前回見てきたように、長期目線で右肩上がりの成長を想定するなら、一括投資は資産運用に最も相応しい方法と言えます。
一方、運用を始めたら一切やり直しができないため、長い運用期間を過ごす中でメンタル面で「安心できない」日々が続きます。
そのため、自身の投資目的やリスク許容度をよく理解したうえで長期運用を継続する「胆力」が必要になります。
つまり、感情の起伏や周囲の声に動じず、資産価値が暴落しても投げ売りしない、反対に急騰しても安易に利益確定しない、という規律を守ることが重要です。
積立投資
積立投資とは定期的に定額もしくは定率で資産を購入する方法です。
ここでは、日経平均株価へ連動する資産があると仮定して、毎月1万円を定額で積立投資したシミュレーション結果を見て頂きます。ただし、積立を開始するのは、現実に日経平均が最高値を記録した時点からとします。
日経平均株価は、1989年12月29日に38915円87銭(終値ベース)を記録して以来、30年以上も最高値は更新されていません。
そんな状況にもかかわらず、積立開始から33年3カ月経過した2023年3月末日時点では、積立元本399万円に対し資産価値737万円と、2倍弱に運用できました。
一度も最高値に届いていないのに、最終的に増えているのです。
不思議に思われるかもしれませんが、これが定額積立の威力です。
これは、1回あたりの投資額を固定することで「安い時に多く買い、高い時に少なく買う」という効果が積み上がった結果です。
簡単な例を見てみましょう。
まず、1株100円の時に積立を開始したとします。
すると、購入できる株数は、
1回目 10,000円÷100円=100株
になります。
翌月は1株90円に値下がりし、翌々月は1株110円に値上がり、4カ月目は1株100円に戻った、とします。
すると、その期間の購入明細は以下になります。
2回目 10,000円÷90円=111株
3回目 10,000円÷110円=90株
4回目 10,000円÷100円=100株
この4回の積立で以下の通り購入できました。
100+111+90+100=401株(以下、①)
一方、積立開始時の株価が4回の積立期間で変わらず100円だった場合、4回の積立合計は、
100+100+100+100=400株(以下、②)
です。
①と②を比較すると、最初と最後の株価は同じなのに、①の方が1株多く購入できていることが分かります。
現実の相場は上がったり下がったりを繰り返すので、その動きに抗わず定額積立すれば、自動的にストレスなく「安い時に多く買い、高い時に少なく買う」ことができ、最終的に資産が増えることになるわけです。
このようして定額積立で株式の購入数を増やす(正確には購入単価を平準化する)ことを、ドル・コスト平均法と呼びます。
現実的な方法
ここまで見てきたことから、時間を味方につける、つまり長期投資ができれば、一括も積立も資産運用として有効な方法であることが分かりました。
最後に参考として頂くために、一括と積立との比較をお見せしたいと思います。
この類の比較は、様々なウェブサイトでシミュレーションできます。
ここでは、一例として三菱UFJアセットマネジメントで試算した結果を提示します。
試算条件は、
投資元本 240万円(一括だと最初に全額240万円、積立だと毎月1万円)
投資期間 20年
年平均リターン 5%
としています。
過去を参考にしてみると、毎年同率のリターンが得られることは現実にはほぼ無いですが、長期で平均したら右肩上がりになったという結果は十分想定できるものです。
20年後の結果は、
一括 6,367,914円(約2.7倍)
積立 4,058,045円(約1.7倍)
になったので、積立より一括の方が資産は増えていますね。
ただし、これは単純な条件下で行ったシミュレーションなので、条件次第で結果は異なるという点に注意が必要です。
つまり、資産を購入する際に一括か積立か、どちらの方法で投資すればいいか、結局は自身に合った方を選べばいいのです。
どちらを選択するにしても、大切なのは時間を味方につけるため「少額でもいいのでなるべく早く資産運用を始めること」と言えるでしょう。