日本のデフレ脱却と経済正常化への期待が膨らむなか、将来の物価と賃金の上昇バランスが話題になる場面が増えてきました。
目先の生活に直結する話なので、誰もが気になるテーマですよね。
しかし、多くの人の声に耳を傾けると、その内容はキャッシュフローのことが中心で、資産については「今は問題ないから後回し」というように、あまり深く考えていない印象です。
確かに、景気が良くなり賃金が増えていけば、物価が上昇しても生活は潤っていくでしょう。
ただし、賃金が無くなってしまったら、どうでしょうか?
生涯現役で働ける人は、そう多くありません。
ほとんどの人が、いつかは現役を引退します。
すると、労働収入は無くなり、年金収入と蓄えた資産の取り崩しによって、生活を維持していくことになります。
こうしたことを想像できる人は、資産について「今は問題ないけど、将来どうなるか分からない」と考え、不安が大きくなることがあります。
そんな不安に立ち向かうため、「良いアドバイスは無いか」「誰かに相談したい」と思い、何か行動したくなるかもしれません。
そんなときに頼れるのが、ファイナンシャルプランナー(FP)です。
プロのFPによるファイナンシャルプランニングは、お金の不安を解消したい人にとって、とても有益なものになるでしょう。
ところが日本では、多くの人にとってFPは馴染みの薄い存在のままで、どんな価値があるのか分からない、というもったいない状態にあります。
一方、世界に目を向けてみると、FPを活用することに価値を見出し、実際にファイナンシャルプランニングを受けている人が数多くいらっしゃいます。
そうした世界中の生活者は、FPにどのような役割を期待して、FPをどう評価しているのでしょうか?
今回は、グローバルに実施された生活者調査を基に、ファイナンシャルプランニングやFPが、生活者にとってどんな価値を提供しているのか、その実態を見ていきます。
お読み頂いた後に、「FPに声をかけてみようかな?」と思って頂ければ嬉しいです。
誰でもファイナンシャルプランナーになれる
はじめに、FPのことを簡単に説明します。
そもそも、世の中にはどんなFPがいるかご存じでしょうか?
あまり知られていませんが、実は「ファイナンシャルプランナー」という名称は、誰でも名乗ることができます(2024年4月20日時点の状況)。
つまり、専門の資格を持っていない人でも、今すぐFPになれるわけです。
「お金のプロであるFPに相談したい」という人にとっては、ちょっと不安な状態ですよね。
そのためFPを選択する際は、相談者の利益を優先する倫理観と、ファイナンシャルプランニングに必要な知識と経験を有しているかどうかが、重要な判断基準とされています。
世界的にも、相談すべきFPの基準は「信頼に足る認定資格者である」と言われています。
FPの認定
日本においては、FPとして信頼できる認定資格者として、1級FP技能士とCFP®(Certified Financial Plannerの略)の二つが存在しています。
1級FP技能士は日本の国家資格で、CFP®はFPSB(Financial Planning Standards Board)の基準による国際資格です。
FPSBは米国に本部を置く世界的なFP組織で、日本国内でのメンバーとしての活動は、日本FP協会が全国で展開しています。
1級FP技能士は、一度認定されてしまえば更新しなくても良い永年資格ですが、CFP®は3年に一度の更新が必要になり、認定者であり続けるには継続的な知識のブラッシュアップを要します。
この点を考えると、どちらか一方しか認定を受けていないFPに相談するなら、知識面で最新情報を有している可能性が高いCFP®がお勧めでしょう。
…ちなみに私は、どちらの認定資格も有しているので、安心してご相談頂けるFPだと自負しています。
世界の生活者調査
それでは、本題に入りましょう。
コロナ禍を経て世界的なインフレが続いているなか、経済的な豊かさを求めてお金に関するアドバイスを受けたい、という生活者からの需要が大きく高まっています。
ここでご紹介するのは、そんな状況を良く映し出している調査になります。
2023年にFPSBから報告された世界の生活者に対するファイナンシャルプランニングの価値調査(原文英語)です。
調査の実施者は、FPビジネスとは関係ない独立系の調査会社(MYMAVINS社)であるため、取得されたデータは中立公平で客観的なものだと言えます。
この調査の概要は以下の通りです。
調査期間:2023年2月
調査方法:オンライン
対象年齢:25歳以上
対象人数:15,332人
対象国・地域(計15):米国、カナダ、英国、アイルランド、オランダ、南アフリカ、シンガポール、韓国、中国、台湾、香港、インド、マレーシア、オーストラリア、ニュージーランド
金銭面の条件:年収60,000米ドル以上
または資産35,000米ドル以上
調査は日本以外の15カ国・地域の広域で行われました。
年齢や場所によって生活スタイルは様々ですが、金銭面の条件に基づけば、この調査の対象は、世界の平均的な生活水準の人とみなして良いでしょう。
OECDが公表している平均賃金のうち、主な国の金額は下記の通りです。
米国 :77,463米ドル
ドイツ:58,940米ドル
日本 :41,509米ドル
OECD合計:53,416米ドル
これは各国の2022年国民経済計算に基づく年収(労働収入)で、現時点(2024年4月)で利用可能な最新統計になります。
悲しいことに、G7では日本がぶっちぎり最下位です。
ここからは、調査の結果をお伝えします。
以下、枠で囲った部分は、上位の回答内容と人数割合を表しています。
まず、調査対象全体では、生活者の2人に1人が家計に関する不安を感じており、5人に1人が経済的な安全性が欠如しているという回答でした。
また、これまでFPにアドバイスを受けていない人(8,163人)では、3人に1人が次の項目を改善したいと考えており、7割もの人がFPに相談したい意向を持っています。
・生活資金を充足させること(36%)
・理想のライフスタイルを送る能力(35%)
・経済的な不安やストレスの低減(心の安らぎ)(32%)
・より快適な老後を実現するための現実的プラン(32%)
一方、これまでFPにアドバイスを受けている人(7,167人)では、3人に1人が次の項目でFPによるアドバイスが手助けになったと回答しています。
・より快適な老後を実現するための現実的プラン(35%)
・経済状況の最大活用(33%)
・経済的な不安やストレスの低減(心の安らぎ)(33%)
・面倒な計画や時間の節約(32%)
・長期目標の明確化と実現(32%)
これらのデータから、FPにアドバイスを受けることは、自身が感じている不安や課題を解決する有効な手段であることが見えてきます。
世界中でFPのアドバイスが必要なのは、決して一部の富裕層だけでなく、我々のような一般的な生活者にも当てはまるわけですね。
経済面だけではない大きなメリット
先ほどのデータにも表れていますが、FPを活用するメリットは、生活に必要なキャッシュフローの改善や資産形成という経済面だけに留まりません。
実際、これまでFPにアドバイスを受けている人(7,167人)へ「ファイナンシャルプランニングから得られた経済面以外の利益は何か?」という追加質問をしたところ、このような回答となりました。
・メンタルヘルスの改善(48%)
・家族の生活の向上(48%)
・仕事の満足度の高まり(37%)
・社会生活の向上(35%)
・身体の健康の改善(34%)
この結果は、次のように解釈できるのではないでしょうか。
まず、ファイナンシャルプランニングの手法により、数字を用いて現実を客観的に把握し目標を明確にすることで、生活上の課題を解決する方法を見つけられます。
すると、目的意識が向上し、より良い行動を選択する動機付けが生まれます。
そうして将来の見通しが明るくなってくると、経済的な不安が取り除かれ、今だけでなく先々の生活にも前向きになれるため、メンタルヘルスが充実し身体の健康にもプラスに働きます。
経済面も心身面も健康であれば、社会生活にも積極的になれます。
つまり、人生が正のスパイラルに入ることで、生活の質(QOL: Quality Of Life)の向上へと繋がるわけです。
また、これまでCFP®にアドバイスを受けた人(A)と、受けていない人(B)に、以下項目について100点満点のスコアで現状評価してもらった結果も、とても興味深いデータになっています。
・生活の質(QOL)
A:73点 B:66点
・経済面(金銭面)の自信
A:71点 B:60点
・経済面(金銭面)の満足度
A:72点 B:59点
先ほど、調査対象の生活水準は、世界的に見て平均レベルだと説明しました。
そうした人が現状を自己評価したところ、CFP®からアドバイス無しの人(B)では「可もなく不可もなかった」一方、アドバイスありの人(A)ではどの項目も「良好な状態だった」、という違いが見て取れますね。
これは注目に値する結果ですが、だからと言って「FPに相談しなければならない」、ということではありません。
このデータの解釈は、「何もしなくても悪くはない」けど、CFP®のような信頼に足るプロのFPを活用すれば「現状をより良いものに改善できる」、という意味になると思います。
FPにまつわる誤解を解いて豊かになろう
ここまで見てきたように、世界の生活者の多くは、どの国でも同じような不安や悩みを抱いています。
そして、思い切ってFPからアドバイスを受けた人のほとんどが、現状改善に満足した結果を得ていることも分かりました。
それでもなお、「相談料が高い(30%)」「信頼できる人がいない(29%)」と感じることが、これまでFPを活用していない人に多いという結果が、今回の調査で報告されています。
ただし、これは大きな誤解だと言えます。
というのも、実際にFPを活用した人のほとんどは、次のような認識に至っているからです。
・CFP®は顧客利益を最優先した(98%)
・相談料以上の価値があった(84%)
・目に見えて経済的に豊かになった(82%)
弁護士や税理士と異なり、FPが何を提供してくれるのか分からない、という人は多いです。
そのため、FPに相談することはハードルが高いと考えがちです。
さらに日本では、FPを活用すること自体が一般層まで広がっていないため、実際にアドバイスを受けた人の声を聞く機会が少ない、という現実もあります。
そうした情報不足を補う意味で、今回ご紹介したデータが参考になれば幸いです。
この記事を通して、ファイナンシャルプランニングやFPに対する世界の生活者の本音を知ることで、FP活用に対する心理的なハードルを下げて頂けたなら、嬉しい限りです。
お金に関する事情は、ひとりひとり異なります。
他者と似たような内容であっても同じではない、その人特有のオンリーワンなものです。
そして、残念ながら学校や職場では、誰も何も教えてくれません。
そんなお金の不安や悩みについて、親身になって話を聴き、最適なプランを一緒に考えて、実行を支援してくれる存在、それが「あなただけのコンサルタント」であるFPです。
懐だけでなく心も豊かになる生き方を実現するため、まずは気軽にFPと話してみませんか?