長田FPオフィス

お金と正しく付き合うブログ

インフレとデフレ

お金を物・サービスと交換する際の条件は、それぞれの価値の相対評価で決まります。
どちらの価値が大きいか・小さいかで、値段の高い・安いが決まるというわけです。

この交換条件は、経済状態がインフレかデフレかを知ることで見えてきます。
つまり、お金を使う前に「今は割高?それとも割安?」を判断する助けになります。

大切なお金を守るため、インフレとデフレについてポイントをおさえておきましょう。

価値を量る

インフレとデフレの前に、モノの値段がどうやって決まるのか、ちょっと整理してみましょう。

私たちが物やサービス(以下、商品と言います)を欲するのは、それが自身にとって価値があると考えるからです。
無償で貰えたらありがたいですが、通常は、欲しいものを得るためには対価が必要です。

人類は長い歴史を経て、その対価を物々交換からお金を介して交換することにシフトさせました。
これは「お金には価値がある」と信じている人々の間で成り立つ、とても便利な交換方式です。
そして、この交換方式を盤石にするには、お金=通貨に対する信用を、一部の人に限定せず社会全体で共有することが必須です。
例えば、現代の日本では、日本円は商品と交換できる価値があると信用されているため、様々な場面で安心して使用できますよね。

さて、何かを交換する際は、それと価値が等しいものを対価として提供する「等価交換」を基本とします。
それらの価値が等しいかどうかは、誰かが勝手に決めるわけではなく、「市場」によって量られます。

市場では、様々な商品に対して大勢の売り手と買い手がいます。
商品の売買は、売り手と買い手の双方が納得する金額で成立しますが、どちらか一方でも納得できないと売買は成立しません。
市場は売買をするための場所なので、それが成立しない場合は、売り手も買い手も自らの価値判断を見直します。
売買が成立する様に互いに歩み寄って、最終的にお互いが納得する=等価であると認められる状態に到達します。

つまり、商品とお金の価値は、売り手と買い手によって「相対的」に量られた結果、決まるわけです。
あくまで「相対的」なので、その時の情勢(需要と供給のバランスなど)に応じて、価値の等しさは変化します。
いわゆる時価ですね。

一方、売買がたくさん成立することで「この商品の金額は、だいたい〇〇円くらい」という価格が分かってきます。
このちょうど良さそうな価格のことを、ここでは「適正価格」と言うことにしましょう。
実生活において、あらゆる商品が時価でしか取引できないとなれば、売買する度に交渉したり幾らお金を用意すれば良いか分からなかったりと、不便極まりないです。
というわけで、通常は、適正価格を基準にして売買が行われています。

適正価格の変化から経済状態を知る

適正価格というのは、「商品とお金の価値」が等しいかを量る目安になります。
なので、ある国において、あらゆる商品の適正価格を積み上げていけば、その国の経済状態を知ることができます。

また、商品とお金の価値は相対的で一定ではないため、そこそこの期間に渡って売買を繰り返すと、時勢に応じて適正価格は変化します。

ということは、異なる時点の適正価格の変化が分かれば、その間に経済状態がどう変化したか知ることができるわけです。

実際に基準時点と現在時点の経済状態を比較すれば、その国の「商品とお金の価値」の変化がデータとして得られます。
そのデータを基に「お金の方が商品より価値が低い状態」をインフレ、「お金の方が商品より価値が高い状態」をデフレと呼ぶことにしたわけです。

一般的に、景気が良くなって世に出回るお金の量(通貨流通量)が増えれば、商品よりお金の価値が低くなりインフレを誘発しますが、景気が悪くなってお金が出回ら無くなればデフレに陥りやすいです。
また、各国の中央銀行によって、意図的に通貨流通量がコントロールされることもあります。

インフレ・デフレの話は壮大に広がるのでキリがありませんが、家計にとって重要なポイントを一つに絞るならば、それは「購買力」になります。
というわけで、購買力の観点から、それぞれの状態をシンプルに説明してみます。

インフレ相対的な価値:お金(低)<商品(高)

お金の方が商品より価値が低い状態、つまりインフレが続くと、同じ商品を買うのに必要なお金の額が、昨日より今日、今日より明日の方が高くなります。
例えば、昨日100円で買えたパンが、今日は110円、明日は120円という具合で、時間とともに値段が上がっていきます。

極端かもしれませんが、インフレだと、今あなたの手元のお金で買えていた商品が、明日から先は買えなくなってしまうことが起こり得ます。
お金は商品と交換する=商品を買うためのものですから、インフレとはお金の購買力が下がることを意味します。

【デフレ】相対的な価値:お金(高)>商品(低)

インフレと反対に、お金の方が商品より価値が高いデフレの状態だと、先ほどの例では、昨日100円で買えたパンが、今日は90円、明日は80円と、時間とともに値段が下がっていきます。
つまり、デフレとはお金の購買力が上がることを意味します。

インフレとデフレの波と長期傾向

世界の歴史を振り返ると、インフレとデフレを交互に繰り返しています。
さらに、世界経済を100年レベルの長期でみると、インフレ・デフレの波を繰り返しながら、インフレ傾向にあるようです。

人類の経済活動が活発になり価値ある商品の数が増えただけでなく、お金の量がそれ以上に増えた結果ではないでしょうか。
こう考えると、世界的に通貨流通量が増え続けるのであれば、長期インフレ傾向は今後も継続するように思えます。

欲しい商品がある場合、購買力の観点では、インフレだと今日買った方が割安(将来の方が値段は上がる)、デフレだと明日買った方が割安(将来の方が値段は下がる)と言えます。

日本では30年以上に渡ってデフレが続いたため、今日も明日も値段に大差ない、という意識が染みついている方も多いでしょう。
しかしながら、高額な買い物を検討する際は、世界的には長期インフレ傾向(値段は上がりやすい)である事実も、頭の片隅に置いておきたいところです。